上 下
36 / 183

奴隷市場 四

しおりを挟む
 いずれも若く美しい男女である。皆、それぞれの国の名家や富裕層の家の出のようで、衣服は汚れて、高価な装飾品はすべて奪われてはいても、どことなく生まれ育ちの良さが偲ばれる。それだけに、まるで品評会に出された家畜のように品定めされている様子は悲惨だった。
「ふむ。これは上玉だ。次。まぁまぁじゃな」
 男は検分しながらなにやら書きこんでいく。
 まさに古代の奴隷市場そのものの光景が展開しているのだ。
 アレクサンダーの番が来た。
 家名に泥がつくことを恐れ、アレクサンダーは一瞬、名を偽ろうとしたが、きっぱりと自分の名を告げた。
 恥じるべきは彼らであり、自分には名を偽る理由などない。
「ふうむ……。おまえがモール少佐か。話には聞いていたが。なるほど美男じゃな」
 近くで見ると、黒衣の小男の左目の上にひきつった傷があることが知れる。
「儂は、ソロモンじゃ。覚えておけ」
 歴史上有名な賢者と同名である。本名なのかどうかはわからない。よくある名だ。
「二十六歳か。ふうむ。薹が立っておるが、そういうのが好きな者もおおいしな。あのお方は、子どもは好かんというていらしたから、ちょうど良いかもな」
 下劣な言葉に怒りを覚えつつ、ここでも聞いた〝あの方〟という言葉にアレクサンダーは気を引かれる。先ほどパパスという男が言っていた人物のことにちがいない。
いったい何者なのか。まだ見ぬ敵にアレクサンダーはひそかに戦意を燃やした。
「よし。奴隷どもを船から下ろせ」
 ソロモンのしゃがれた声が青空の下ひびく。
 これから新たな地獄への行進である。 
 若い娘のなかには泣き出す者もいる。なかには母国語で叫ぶ少年もおり、アレクサンダーは彼が「両親に連絡してくれば、金はいくらでも払うから」と、どうにか交渉しようとしているのが聞きとれた。
 だが哀訴も嘆願もむなしく、〝奴隷〟たちはそれぞれ数人に分けられ、小舟で海に降ろされることになった。この船は目的地には着かないようだ。
 彼らとともに進んだアレクサンダーは、船首近くにある柱のところで、息を飲んだ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

魔族に捕らえられた剣士、淫らに拘束され弄ばれる

たつしろ虎見
BL
魔族ブラッドに捕らえられた剣士エヴァンは、大罪人として拘束され様々な辱めを受ける。性器をリボンで戒められる、卑猥な動きや衣装を強制される……いくら辱められ、その身体を操られても、心を壊す事すら許されないまま魔法で快楽を押し付けられるエヴァン。更にブラッドにはある思惑があり……。 表紙:湯弐さん(https://www.pixiv.net/users/3989101)

少年野球で知り合ってやけに懐いてきた後輩のあえぎ声が頭から離れない

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
少年野球で知り合い、やたら懐いてきた後輩がいた。 ある日、彼にちょっとしたイタズラをした。何気なく出したちょっかいだった。 だがそのときに発せられたあえぎ声が頭から離れなくなり、俺の行為はどんどんエスカレートしていく。

変態村♂〜俺、やられます!〜

ゆきみまんじゅう
BL
地図から消えた村。 そこに肝試しに行った翔馬たち男3人。 暗闇から聞こえる不気味な足音、遠くから聞こえる笑い声。 必死に逃げる翔馬たちを救った村人に案内され、ある村へたどり着く。 その村は男しかおらず、翔馬たちが異変に気づく頃には、すでに囚われの身になってしまう。 果たして翔馬たちは、抱かれてしまう前に、村から脱出できるのだろうか?

イケメン王子四兄弟に捕まって、女にされました。

天災
BL
 イケメン王子四兄弟に捕まりました。  僕は、女にされました。

良かれと思ってうっかり執事をハメてしまった

天災
BL
 良かれと思ってつい…やってしまいました。

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

痴漢に勝てない肉便器のゆずきくん♡

しゃくな
BL
痴漢にあってぷるぷるしていた男子高校生があへあへ快楽堕ちするお話です。 主人公 花山 柚木(17) ちっちゃくて可愛い男子高校生。電車通学。毎朝痴漢されている。 髪の色とか目の色はお好みでどうぞ。

新しいパパは超美人??~母と息子の雌堕ち記録~

焼き芋さん
BL
ママが連れてきたパパは超美人でした。 美しい声、引き締まったボディ、スラリと伸びた美しいおみ足。 スタイルも良くママよりも綺麗…でもそんなパパには太くて立派なおちんちんが付いていました。 これは…そんなパパに快楽地獄に堕とされた母と息子の物語… ※DLsite様でCG集販売の予定あり

処理中です...