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奴隷市場 二
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アレクサンダーは怒りよりも驚きにかられ、後ろの男に振り向き、次には睨みつけた。
男は窶れ果てていると思っていたアレクサンダーの思いもよらぬ気迫に一瞬たじろいだが、馬鹿にしたように、わざとらしく怯んでみせた。
「おおっと、美人が怒ると怖いねぇ。そんな顔するなよ。島に着いたらお楽しみが待っているぜ。そのまえに、どうだ、俺とちょっと遊ばないか?」
アレクサンダーがまごついたのは、相手の英語が下手なせいだけではない。
「よせ、ハサピス」
前方を行く男が、同僚をいさめる。
「気取るなよ、パパス。どうせ島に着いたら、こいつらみんな淫売屋行きなんだぜ。その前に俺らだって楽しみたいぜ。こんな美人はめったにお目にかかれないぜ」
ハサピスと呼ばれた男の手が、あろうことかアレクサンダーの臀部にのびてきた。
「なにをする!」
あまりのことに逆上したアレクサンダーは、沸騰するような怒りに力を取り戻し、相手の頬を殴っていた。
パン! と頬を打った音が廊下に響く。
「な、なにしやがる、このオカマ野郎!」
殴り返そうとしたハサピスの右手は大柄な同僚の手に封じられた。
「もういいから黙っていろ、ハサピス」
「なんだよ、オカマを庇うのか? こいつは捕虜だぜ」
「ああ、そうだ。だが、俺たちの捕虜ではなく、あの方の捕虜だ。俺たちの仕事は、捕虜をつれていくことだけだ。行くぞ」
あの方――。
パパスという男が口にした‶あの方〟というのが誰なのかアレクサンダーにはわからないが、その人物こそ自分を攫った張本人であり、あの医師に命令して、自分の身体に、このような異様な手術をほどこさせた、一番の敵なのだと直感した。
自分の身の上におきた、この悪夢のようなできごとのすべての原因であり、医師やヴルブナよりも憎むべき敵なのだと確信する。
あの方とは、誰だ? そう訊きたいのを必死にこらえているうちに、視界に光が差し込んできた。階段を上がるにつれて、辺りは金色に変わっていた。
男は窶れ果てていると思っていたアレクサンダーの思いもよらぬ気迫に一瞬たじろいだが、馬鹿にしたように、わざとらしく怯んでみせた。
「おおっと、美人が怒ると怖いねぇ。そんな顔するなよ。島に着いたらお楽しみが待っているぜ。そのまえに、どうだ、俺とちょっと遊ばないか?」
アレクサンダーがまごついたのは、相手の英語が下手なせいだけではない。
「よせ、ハサピス」
前方を行く男が、同僚をいさめる。
「気取るなよ、パパス。どうせ島に着いたら、こいつらみんな淫売屋行きなんだぜ。その前に俺らだって楽しみたいぜ。こんな美人はめったにお目にかかれないぜ」
ハサピスと呼ばれた男の手が、あろうことかアレクサンダーの臀部にのびてきた。
「なにをする!」
あまりのことに逆上したアレクサンダーは、沸騰するような怒りに力を取り戻し、相手の頬を殴っていた。
パン! と頬を打った音が廊下に響く。
「な、なにしやがる、このオカマ野郎!」
殴り返そうとしたハサピスの右手は大柄な同僚の手に封じられた。
「もういいから黙っていろ、ハサピス」
「なんだよ、オカマを庇うのか? こいつは捕虜だぜ」
「ああ、そうだ。だが、俺たちの捕虜ではなく、あの方の捕虜だ。俺たちの仕事は、捕虜をつれていくことだけだ。行くぞ」
あの方――。
パパスという男が口にした‶あの方〟というのが誰なのかアレクサンダーにはわからないが、その人物こそ自分を攫った張本人であり、あの医師に命令して、自分の身体に、このような異様な手術をほどこさせた、一番の敵なのだと直感した。
自分の身の上におきた、この悪夢のようなできごとのすべての原因であり、医師やヴルブナよりも憎むべき敵なのだと確信する。
あの方とは、誰だ? そう訊きたいのを必死にこらえているうちに、視界に光が差し込んできた。階段を上がるにつれて、辺りは金色に変わっていた。
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