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血塗られた結婚式 五
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激しい爆音が、神の聖域に響きわたる。
先ほど叫んだ男は死んだのか、怪我をしたのか、芝生の上にうずくまっているように見える。
男の後ろにいる敵たちも驚き、恐れ、動かない。
その隙に警察がなだれ込んできた。
「これで片付くな。少佐、こちらへ。ここにいると狙われる」
教会の建物の影へと誘導された。ヴルブナに主導権を取られているようで悔しいが、こんなときにも有力な武器を携帯していた彼に、今は反抗できず、アレクサンダーは言われるままに壁際に身を寄せる。
「少佐、怪我はないですか?」
「ああ」
「そうですか。それは良かった。あんたの美しい身体に傷ができたら国家の損失だ」
さすがにこの言葉にはムッとして、アレクサンダーが何か言おうとした瞬間、咄嗟に腕に小さな痛みが走った。
「う……」
服の上から注射器が刺さっているのが視界に入った。
「な、何を……」
それだけ言うのが精いっぱいだった。アレクサンダーは頭のなかで、脳味噌が回転しているような錯覚に襲われ、言葉が出ない。
「少佐、いえ伯爵、しばし眠っていてください。素晴らしい新婚旅行をプレゼントしますよ」
意識を失いかけた瞬間、最後に目に映ったのはヴルブナの卑しい笑みだった。
そして、その背後にはダールケと、オットーが見えた……ようにアレクサンダーには思えた。
その直後アレクサンダーの意識は闇の底に沈んだ。
先ほど叫んだ男は死んだのか、怪我をしたのか、芝生の上にうずくまっているように見える。
男の後ろにいる敵たちも驚き、恐れ、動かない。
その隙に警察がなだれ込んできた。
「これで片付くな。少佐、こちらへ。ここにいると狙われる」
教会の建物の影へと誘導された。ヴルブナに主導権を取られているようで悔しいが、こんなときにも有力な武器を携帯していた彼に、今は反抗できず、アレクサンダーは言われるままに壁際に身を寄せる。
「少佐、怪我はないですか?」
「ああ」
「そうですか。それは良かった。あんたの美しい身体に傷ができたら国家の損失だ」
さすがにこの言葉にはムッとして、アレクサンダーが何か言おうとした瞬間、咄嗟に腕に小さな痛みが走った。
「う……」
服の上から注射器が刺さっているのが視界に入った。
「な、何を……」
それだけ言うのが精いっぱいだった。アレクサンダーは頭のなかで、脳味噌が回転しているような錯覚に襲われ、言葉が出ない。
「少佐、いえ伯爵、しばし眠っていてください。素晴らしい新婚旅行をプレゼントしますよ」
意識を失いかけた瞬間、最後に目に映ったのはヴルブナの卑しい笑みだった。
そして、その背後にはダールケと、オットーが見えた……ようにアレクサンダーには思えた。
その直後アレクサンダーの意識は闇の底に沈んだ。
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