紅蓮の島にて、永久の夢

文月 沙織

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血塗られた結婚式 四

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 教会の芝生の上を進みながら、ヴルブナは答えた。
「今日の客には著名人や軍や政府の高官がおおい。それを人質にとって政権転覆をはかっているのかもしれません。それにしても……」
「なんだ?」
「いや、あんたが‶畜生〟なんて言葉を使うとは」
 こんなときにくだらんことを言うな、と言ってやりたいが、それどころではなかった。
「来た! テロリストだ!」
 すぐそこまで武装した男たちが迫ってきている。
 招待客のなかには高位の軍人も多く、彼らは銃を携帯しており、どうにか応戦しているが、祝いの席に招かれ浮かれ気分で酒を飲んでいた者もおり、やや分が悪い。
 アレクサンダーは、女性や武器を持たない民間人が逃避できるよう気を配った。
 自分の結婚式に来た百人以上の客たちに怪我をさせるわけにはいかない。
 何発か銃声がひびき、いったん止み、しばし辺りは静かになる。向こうもこちらの様子をうかがっているのだ。
 破壊音が響き、緑の芝生の上にオレンジの光が走る。火炎瓶を投げつけてきたのだ。
 少しはなれた芝生の上に倒れている者もいる。一人は軍服姿で招待客であることが知れる。アレクサンダーは呻いた。
 さらに向こうで倒れているのは、おそらくは敵だろう。
 どれぐらいたったか。やがて騒ぎを聞きつけた警官や警察車が教会の門あたりまで来たことがわかり、アレクサンダーは自分たちの勝利を確信した。
「愚かな連中だ。テロなどうまくいくわけがないのに」
 ヴルブナの呟き声が聞こえたかのように、教会の庭に男の声が響いた。
「我々は『白い楽隊』だ! 現政権に反抗するために今日、ここへ来た! 武器を捨てろ!」
「それはこっちの台詞だよ」
 ヴルブナが軍服の懐から取り出したのは、なんと手榴弾だった。
「あ、おい!」
 そんなものを持ち歩いていることに驚く暇もなく、彼はそれを敵に向かって投げつけた。
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