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血塗られた結婚式 二

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 当時寮長だったアレクサンダーは幾度となく彼を譴責し、ときには鞭打ちの体罰もあたえたが、まったく反省の色はなく、へらへらと笑っていた。
 今日も晴れやかな六月の空の下で、アレクサンダーをふくめ周囲のすべてを舐めきったようににやけた笑いを見せている。結婚式の祝いにきているというのに、わざとタキシードを崩れたかたちに着ているのがまたこちらを馬鹿にしているとしか思えない。
 アレクサンダーはあらためて数年ぶりに、このいけ好かない後輩を見た。
 青い目に金髪で、顔にはそばかすが浮いている。背は標準でアレクサンダーよりやや低いぐらいだが、政府のもとめるアーリア人の基準は充分に満たしており、財力といい家柄といい、申し分のない若者なのだが、なにごとにおいても不真面目なのだ。
 なぜわざわざ来たのだろう、と内心首をひねった。
 そんなアレクサンダーの意地悪い視線などものともせず、オットーは花嫁に向かって陽気な声をあげた。
「おお、こちらがアレクサンダーを射止めた幸運な女性かい? モール伯爵夫人にご挨拶したいね」
 アディーレがやや鼻白みながら、笑顔を返す。
「アディーレ、彼は僕の後輩で、」
「貴族から商人になり下がったと評判のクルーゲ子爵家の三男ですよ。三男なんでたいした財産はないけれど、アレクサンダーに飽きたときはいつでも言ってくれ」
 アディーレの笑みがこわばった。
 アレクサンダーは、さすがに苦虫噛み潰した顔になっていたかもしれない。
 学生時代の不良少年から彼はまったく進歩していないのだ。
 だが事実、クルーゲ家は貴族だが、鉄鋼から武器の製造に手を出し、近年莫大な財産を得た。今では貴族としてより実業家として幅をきかせており、そういった家はやはり古い歴史と伝統を重んじるタイプの貴族からは疎んじられている。
「それじゃ、あとでまた。可愛い花嫁さんと仲良くな」
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