紅蓮の島にて、永久の夢

文月 沙織

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婚前診断 十

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「しかし薄いですね。ステラ、おまえの方がよっぽど濃いんじゃないか?」
 このころの欧州では、女性でも腋毛を処理する習慣があまりなかった。
「うるさいわね!」
 悪童のようなヴルブナの笑い声。
「そろそろ、御開帳といきますか? 一番肝心なところですからね」
「そうだな。ここから先は、さすがにレディたちには出ていってもらうか?」
 大佐の声には笑いがふくまれている。
「あら、いやよ。最後まで見たいわ。ずるいわよ、あなたたちだけで楽しむなんて」
 無邪気に見えても娼館で働いているだけあってステラも図太い。
「俺たちは任務としてやっているんだぞ。これは仕事なんだよ」
 ヴルブナの声も笑いをふくんでいる。
「だから私だって協力したんじゃない? いいじゃない、私たちにも見せてよ。ねぇ、マダム」
 ふわり、と香水がかおってくる。まさしく魔香をふりまく魔女が近づいてきた。
「そうね。後学のために是非拝見したいわ」
 意識は朧げなままだが、これからされることをさとってアレクサンダーは絶叫したい気持ちになった。
「よし。ではアレクサンダー=フォン=モール大佐の秘密を公開、と」
 アレクサンダーは全身全霊かけて、死に物狂いで起きあがろうとしたが、身体は主の意思に反してまばたきもできないほど固まったままだ。
 カチャリ、とベルトを外す音が異様に生々しく娼館の居間に響きわたった。
(よせ! やめろ! やめろぉ!)
 動かない身体のかわりに皮膚は心を代弁して額に汗を浮かし、頬はかすかに熱を帯びてきた。
「あら、顔が赤くなっているわ」
 気づいたステラが優しくアレクサンダーの頬を撫でる。
「恥ずかしいのね。男の人の恥ずかしがる様子って、可愛いわ」
 ちゅっ……という音がアレクサンダーの額の上でした。
 他の凌辱者たちは生贄の些細な反応など意にも介さず、熱心に軍服の下を剥いでいく。
「ああ、やっぱり脚も体毛が薄いな。すべすべじゃないか。女でももっと毛深いのは多いぜ」
「よっぽどたくさんの女の脚を見てきたのね」
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