8 / 192
婚前診断 五
しおりを挟む
低いテーブルをかこむように、近くの席にステラとヴルブナが腰かける。大佐の前でもステラはクスクスと笑い、ヴルブナに小声でなにか囁き、ヴルブナが笑いながら答えている。ひどくだらけた様子にアレクサンダーは内心眉をしかめたが、視線はまっすぐに上官に向けた。
「本日はお招きにあずかり……」
「ああ、堅苦しい挨拶はいいから、まぁ、飲みたまえ。明後日は結婚式だね」
大佐の分厚い手がアレクサンダーの肩章に触れた瞬間、アレクサンダーは背がこわばった。
この上官が苦手なのは、やたらとこうして触れてくるせいもある。彼は女好きで知られているが、噂では多少男色の趣味もあるという。もちろん現在の軍では禁忌であり、以前には男色趣味の軍人が厳しく粛清され、死刑にされた例もあるぐらいだ。
だが、こうした噂がまったく消えることはなく、それに伴って、アレクサンダーが異例の早さで出世したのは、この上官の趣味のおかげではないかという説も軍内で囁かれており、アレクサンダーは腹立たしくて仕方ない。
型どおりの祝福を述べたあと、大佐はアレクサンダーにいくつか質問をした。
学生時代の専攻は? 好きなスポーツは? 党に興味をもったきっかけは?
身上調査のような質問に、どことなく腑に落ちないものを感じながら答えつづけ、すすめられるままにグラスを口にした。内心、早く終わってくれないかと願いながら。
酔いがすすむと大佐はますます饒舌になり、質問もきわどいものになっていった。
君はどんな女性が好みなのか? 初めて女性と付き合ったのはいつなのか?
今までも男社会のなかで、こういう質問を受けたことはあり、その都度氷のような冷笑でかわしてきたが、今回はうまくいかなかった。
やや身体がだるくなってきたのだ。
少し疲れがたまっていたのか、もしくは酒が思ったよりも強いものなのか。珍しい味だとは思ったが、口当たりは柔らかく、つい飲み過ぎてしまったのか。
「君はもてるのに、浮いた噂を聞かないね。女性の事務員たちは皆君が声をかけてくるのを待っているのだよ。この店に来てからも、こんな美人がいるというのに目もくれない」
「本日はお招きにあずかり……」
「ああ、堅苦しい挨拶はいいから、まぁ、飲みたまえ。明後日は結婚式だね」
大佐の分厚い手がアレクサンダーの肩章に触れた瞬間、アレクサンダーは背がこわばった。
この上官が苦手なのは、やたらとこうして触れてくるせいもある。彼は女好きで知られているが、噂では多少男色の趣味もあるという。もちろん現在の軍では禁忌であり、以前には男色趣味の軍人が厳しく粛清され、死刑にされた例もあるぐらいだ。
だが、こうした噂がまったく消えることはなく、それに伴って、アレクサンダーが異例の早さで出世したのは、この上官の趣味のおかげではないかという説も軍内で囁かれており、アレクサンダーは腹立たしくて仕方ない。
型どおりの祝福を述べたあと、大佐はアレクサンダーにいくつか質問をした。
学生時代の専攻は? 好きなスポーツは? 党に興味をもったきっかけは?
身上調査のような質問に、どことなく腑に落ちないものを感じながら答えつづけ、すすめられるままにグラスを口にした。内心、早く終わってくれないかと願いながら。
酔いがすすむと大佐はますます饒舌になり、質問もきわどいものになっていった。
君はどんな女性が好みなのか? 初めて女性と付き合ったのはいつなのか?
今までも男社会のなかで、こういう質問を受けたことはあり、その都度氷のような冷笑でかわしてきたが、今回はうまくいかなかった。
やや身体がだるくなってきたのだ。
少し疲れがたまっていたのか、もしくは酒が思ったよりも強いものなのか。珍しい味だとは思ったが、口当たりは柔らかく、つい飲み過ぎてしまったのか。
「君はもてるのに、浮いた噂を聞かないね。女性の事務員たちは皆君が声をかけてくるのを待っているのだよ。この店に来てからも、こんな美人がいるというのに目もくれない」
0
お気に入りに追加
127
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
双葉病院小児病棟
moa
キャラ文芸
ここは双葉病院小児病棟。
病気と闘う子供たち、その病気を治すお医者さんたちの物語。
この双葉病院小児病棟には重い病気から身近な病気、たくさんの幅広い病気の子供たちが入院してきます。
すぐに治って退院していく子もいればそうでない子もいる。
メンタル面のケアも大事になってくる。
当病院は親の付き添いありでの入院は禁止とされています。
親がいると子供たちは甘えてしまうため、あえて離して治療するという方針。
【集中して治療をして早く治す】
それがこの病院のモットーです。
※この物語はフィクションです。
実際の病院、治療とは異なることもあると思いますが暖かい目で見ていただけると幸いです。
身体検査
RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、
選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる