鈴の鳴る夜に

文月 沙織

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嬲られ図 七

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 房木はまだ未練がましげだが、川堀の言葉に反論はしない。
「それは……参ったな。が、仕方ない」
 東條は苦い顔をしたが、それ以上は逆らわなかった。
 自分をまったく無視した男たちのやりとりを聞きながら、花若は蒼白になっている。
「あ……、い、いやだ」
 覚悟を決めたように東條は川堀と房木、そして小島が見ているまえで、花若に近寄る。
「さ、花若さん、いや、花若、今夜一晩、君は私のものだよ」
「い、いやです、こ、来ないでください!」 
「君にことわる権利はないんだよ。君は、買われたのだから」
 残酷な言葉をやさしく紡ぎ、東條は花若の顎をとらえる。
「う……」
 花若がたじろいだ次の瞬間、その花びらのような唇は東條にとらえられていた。
「んん……!」
 東條はなかなかの手練れだった。花若の唇を吸いながら、その腕や背を撫で、むりやり彼のまだ未熟な性感をたかめようとする。
「ハァ……」
 最初は嫌がってどうにかして逃れようとしていた花若だったが、東條の腕はたくましく、花若のせいいっぱいの抵抗をおさえこんでしまう。
「すごいね」
 房木が感心したように呟いた。
 今から十年まえ、終戦の翌年、日本ではじめての接吻のシーンを映した『はたちの青春』という映画が放映されてかなり話題になったことがあったが、それも実際にその行為を映しているわけではなく、他人の接吻の行為を見ることなど現在でもそうそうないのだ。
 しかも東條のやり方はお座敷などで酔客がふざけて芸者の口を吸うようなものではない。まるで花若の精気を吸い取るような、ぎゃくに己の情熱を吹き込むような、激しく、きびしく、しかもどこか甘やかなものだった。
「はぁ……」
 やっと唇がはなれたとき、花若の瞳は涙でうるんで光っていた。
「ああ、もう……」
 幼児をかかえあげるように東條は花若を己の膝うえに抱きあげると、器用な仕草で背広を脱いだ。
 針のような川堀たちの凝視を平然とはねのけ、もはや照れも戸惑いもせず、東條は花若の胸を揉む。
「い、痛い、やめて!」
「すぐよくなるさ」
 薄紅色に突きだす胸の実を親指と人差し指でつまみあげ、花若をのけぞらせる東條の顔はかんぜんに支配者の顔だった。 
「ははは。東條さんは、なかなかやるね。仕事の面だけではなく、そちらもかなりの手腕をお持ちで」
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