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夜遊び 一
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「え、ええ?」
仰天している竜樹に須藤はそっけなく言う。
「なにを驚いている? まえに約束したろう、本物の馬に乗せてやる、と。ほら、脱げ」
「じょ、冗談だろ!」
竜樹は夜目にも真っ赤になって憤ったが、その怒りをどこふく風と受けながし、須藤は持っていた鞭先で竜樹のシャツの釦をつついた。
「ほら、早く脱げ」
声は本気だった。
絶対に嫌だ、ことわる、と怒鳴って去ってしまえばよかったのだが、それがどうしても竜樹にはできない。耳たぶまで真っ赤になり怒りに身を燃やし、悪魔のような男を睨みつけ、罵声を浴びせても、それでも、竜樹は最後にはみずから胸の釦をはずし、草地のうえにシャツを脱ぎすてた。
十六……もうすぐ十七になろうかという、若々しい、というよりはまだまだ子どもめいた少年の肌を夜気が刺す。
「これでいいだろう?」
「なに甘いこと言っているんだ? ほら、下も脱げ」
「なっ……! こ、こんなところ人に見られたらどうするんだよ?」
うろたえる竜樹にあっさりと須藤は告げた。
「安心しろ。今夜は客人が来るから雛倉家の人は馬場へは来ないさ。さ、早く脱げ」
羞渋しながらも、どうしょうもなく竜樹はズボンのベルトに手をかけた。
(どうして……、僕は正二にさからえないんだろう?)
惨めさ悔しさに泣きだしたいのをこらえ、黒いズボンを脱ぐと、それも地面にたたきつける。
「これはいいな。ちょっとしたストリップだな。今浅草で流行っているんだ。今度、連れていってやるよ。脱ぎかたの勉強になるぞ」
酷くも須藤は頬を染めて悔し泣きしそうな竜樹を笑いながら見ている。
「ほら、ほら。最後のそれも脱げ」
「……これだけは許して……」
さすがに最後の一枚は脱げず、竜樹は哀願するように言うが、そこで許すような須藤ではない。鞭先が白い下着の端に触れたかと思うと、強くふりあげあられ、次の瞬間には、竜樹の太腿のあたりに焼けつくような痛みが走った。
「ひぃっ!」
竜樹は痛みと衝撃にその場にうずくまってしまった。
「駄目だ。全部脱げ。脱ぐんだ、竜樹。靴も靴下も全部だ」
須藤の声は、恋人でも上司でもない、主人のものだった。主人が奴隷に命じているのだ。
「ああ……」
竜樹は恐怖にくずれ落ちそうになったが、そこで奇妙なことに、持ちまえの負けん気が起きたのだ。
鞭をふるう加虐者にたいして、被虐者のゆいいつの抵抗は、受けてたってやるというなけなしの気骨なのかもしれない。
逃げだすのではなく、あえて相手の指示にしたがいつつも、全身からは、もとは名家の子息として誇りたかく育てられた世間知らずだった少年の持つ高慢なまでの自尊心で、怒りと憎しみを糧に竜樹は立ち向かった。もはや、目の前の男が恋しいのか憎いのか竜樹自身でもわからなくなってくる。
仰天している竜樹に須藤はそっけなく言う。
「なにを驚いている? まえに約束したろう、本物の馬に乗せてやる、と。ほら、脱げ」
「じょ、冗談だろ!」
竜樹は夜目にも真っ赤になって憤ったが、その怒りをどこふく風と受けながし、須藤は持っていた鞭先で竜樹のシャツの釦をつついた。
「ほら、早く脱げ」
声は本気だった。
絶対に嫌だ、ことわる、と怒鳴って去ってしまえばよかったのだが、それがどうしても竜樹にはできない。耳たぶまで真っ赤になり怒りに身を燃やし、悪魔のような男を睨みつけ、罵声を浴びせても、それでも、竜樹は最後にはみずから胸の釦をはずし、草地のうえにシャツを脱ぎすてた。
十六……もうすぐ十七になろうかという、若々しい、というよりはまだまだ子どもめいた少年の肌を夜気が刺す。
「これでいいだろう?」
「なに甘いこと言っているんだ? ほら、下も脱げ」
「なっ……! こ、こんなところ人に見られたらどうするんだよ?」
うろたえる竜樹にあっさりと須藤は告げた。
「安心しろ。今夜は客人が来るから雛倉家の人は馬場へは来ないさ。さ、早く脱げ」
羞渋しながらも、どうしょうもなく竜樹はズボンのベルトに手をかけた。
(どうして……、僕は正二にさからえないんだろう?)
惨めさ悔しさに泣きだしたいのをこらえ、黒いズボンを脱ぐと、それも地面にたたきつける。
「これはいいな。ちょっとしたストリップだな。今浅草で流行っているんだ。今度、連れていってやるよ。脱ぎかたの勉強になるぞ」
酷くも須藤は頬を染めて悔し泣きしそうな竜樹を笑いながら見ている。
「ほら、ほら。最後のそれも脱げ」
「……これだけは許して……」
さすがに最後の一枚は脱げず、竜樹は哀願するように言うが、そこで許すような須藤ではない。鞭先が白い下着の端に触れたかと思うと、強くふりあげあられ、次の瞬間には、竜樹の太腿のあたりに焼けつくような痛みが走った。
「ひぃっ!」
竜樹は痛みと衝撃にその場にうずくまってしまった。
「駄目だ。全部脱げ。脱ぐんだ、竜樹。靴も靴下も全部だ」
須藤の声は、恋人でも上司でもない、主人のものだった。主人が奴隷に命じているのだ。
「ああ……」
竜樹は恐怖にくずれ落ちそうになったが、そこで奇妙なことに、持ちまえの負けん気が起きたのだ。
鞭をふるう加虐者にたいして、被虐者のゆいいつの抵抗は、受けてたってやるというなけなしの気骨なのかもしれない。
逃げだすのではなく、あえて相手の指示にしたがいつつも、全身からは、もとは名家の子息として誇りたかく育てられた世間知らずだった少年の持つ高慢なまでの自尊心で、怒りと憎しみを糧に竜樹は立ち向かった。もはや、目の前の男が恋しいのか憎いのか竜樹自身でもわからなくなってくる。
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