昭和幻想鬼譚

文月 沙織

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秘密 四

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 儀式の夜にあつまった客たちは、そういった同じ異種の者たちだという。まさにあれは魔物の宴だったのだ。
「そう……たしかにわたくしたちは化け物でございましょうよ。他人の精力や気力、血を吸って生きながらえているのでございますから」
 都は悲しげで、それでいて不敵な笑いを、整った顔に浮かべる。
「そ、それでは、僕は、気力というのか、生きる力を失って死ぬのか?」
 ここ数日のみずからの乱行を思い出して望はぞっとした。
 自分が仁を貪っていたのではなく、実は仁に自分の精力を吸い取られていたということなのか。そうして若い精を吸い取った仁は、またこれからも美しい容姿のままで生き永らえるのか。
 玉琴は首をひねるような仕草をした。
「それは、あたしたちにもはっきりとは言えないのよねぇ。贄の相手をした連中のなかには、病み衰えて、儀式のあとわずか数日でよぼよぼになって死んだ者もいれば、気が狂ったようになった者もいたし、ぎゃくに同じように若いままで今も長生きしつづけている者もいるし。まぁ、どうなるかは賭けみたいなものね」
 死ぬか、狂うか、生きるか。どれに当たるかわからないと、玉琴は平然とのんきそうに告げた。
「望様のお父様である忠様が儀式を逃げだしたのは、それを知って恐ろしくなったからでございます。あの方は平凡な人生を望まれたのでございますよ」
「馬鹿だよねぇ……。うまくいったら、永遠の命を得られるかもしれないっていうのに。まぁ、すぐ死ぬことになるか、気違いみたいにならないともいえないから、ある意味賢かったのかもしれないけれどね」
 けらけらと玉琴は笑った。
「御前はけっこう持った方だね。あたしの贄となって、寿命を延ばしたのだよ、あの人は」
「ただ、やっぱり身体は衰えていくしかないようね」
 ほっ、と都が息をついた。
「それを考えたら、勇様は当たりだよ。あの方は、外見も若いままさ。あの人はこのままうまくいけば、若い身体のまま生きつづけることができそうだね。教えてあげようか、あの人は御前の息子ではなくて、弟なのさ。五歳ちがいのね」
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