昭和幻想鬼譚

文月 沙織

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儀式 三

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「でも、僕は何をすればいいんですか?」
 儀式は夜になるという。だんだん緊張してきた望が問うと、勇は困ったように眉を寄せた。
「……まぁ。言われたとおりにすればいい」
 口元には微笑が浮かんでいる。

 望は屋敷にいても落ち着かず、散歩に行くことにした。
 この別荘は、改築や修築もかさねており、この時代によく見られたように、和洋折衷となっている。
煉瓦の石壁がつづくかと思えば、途中から木造の源氏塀になっており、以前は地元の農民からは好奇の目で見られたりもしたという。
 だが風情は悪くないと望は思っている。壁に沿って歩いていると、現代的な断髪の少女が、いきなり長髪の熟女に変わったような気がして、おもしろい。
「あら、坊ちゃん、今日もお散歩ですの?」
 ふいに背後から声をかけてきたのは、玉琴だった。
 望はびっくりした。まったく足音も気配も感じなかったからだ。まったく、この女には驚かせられてばかりいる。
「あら、また、そんなお顔をなさって。いやですよ、あたしが妖怪か幽霊みたいじゃないですか。ほほほほ」
 今日もくっきりと紅く塗った唇がなんとも生々しく、妖しい。本当にこの女は化け物ではないかと疑いそうだ。
「た、玉琴さんも散歩ですか?」
 祖父のそばにはべっていなくてよいのですか、と訊きたくなるのを望はおさえた。
 望がゆっくりと歩くと、玉琴も跡を追うように歩く。
 今日の玉琴は濃紺の着物姿だが、すこしも地味に見えない。
 数歩も歩かぬうちに、日は影ってきて、それほど暑さを感じなくなる。風がすこし吹いてきて、あたりの木々の緑葉をゆらした。
「坊ちゃんがお出かけになるので、気になって追いかけてまいりましたのよ」
 関西弁はおさえているが、完全な標準語とも聞こえない話しぶりだ。
「だって、今日は大事な日ですからね。どこかへ雲隠れされてしまったら困りますもの。忠さまのときのように」
 父の名を出されて望は目を見張った。
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