サファヴィア秘話 ―月下の虜囚―

文月 沙織

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淫獄の宴 三

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「あ……、ああ! も、もう」
 気の狂いそうなイルビアの耳に銀髪の青年の声がひびいてくる。

「娘よ、愛しい男を思い出せ。おまえの婚約者の顔を思うのだ」
「……サ、サイラスを?」
 麻薬のようにその言葉がイルビアの頭をとろかし、一瞬の救いをもたらす。

「そうだ。愛しい男だ。今、おまえに触れているのはサイラスだ。そう思え」

 その言葉に笑みこぼしながらイハウが脂ぎった手でイルビアの白い胸をまさぐる。

「あ、い、いや!」
「おまえの胸を揉んでいるのはサイラスだ」
「サ、サイラス?」
「そうだ」

 次の瞬間、かがんでいたバルバスが指で強く鈴を押し込む。
「はあ!」

 のけぞるイルビアの右胸をイハウがねっとりと撫であげる。
「サイラスが今、おまえの花園を愛しているのだ。胸もだ」

 言いながらサルドバは右胸のふくらみをまさぐる。慈しむように優しく。その優しさにイルビアはすがりつかずにいられなかったのだろう。

「ああ。サイラス……」
「そうだ。王女よ、恥じ入ることはない。今お前に触れているのは愛する婚約者だ」
「ああ……」
 閉じられたイルビアの目から涙があふれ出る。その涙のしずくを片手でぬぐってやったサルドバは、イルビアのふるえる唇に己の口を付けた。
(ああ……!)

 慈悲か残忍か、サルドバのしていることは本人でも判断がつかないことだろう。サルドバは幾度となくイルビアの唇を吸うと、優しく右胸を撫で、その白い柔肌のうえに君臨する薄桃の突起にも接吻を落とす。

「はあ……ん」
 サルドバをまねるように、イハウもまた、彼にしては珍しく優しげにイルビアの左の乳首を吸い、甘噛みする。
「ん……! あ、そ、そこ嫌!」
 さらにバルバスによって下肢へ加えられた圧力にイルビアは首をふる。

「イルビア……愛している」
 サルドバは咄嗟にそう呟いていた。その呟きに、イルビアはのけぞった。彼女の頭のなかで火花が炸裂した。



「はあ!」
 おびただしい滴に濡れた銀の玉がふたつ、床に転がった。
 どこかで男たちの嬉しそうな声がはじける。
 だが、イルビアはそれも聞いていない。凄まじい陶酔感に溺れ、磔板に全身をあずけ、しばし彼女の魂は宙をさまよっていた。
 やがて下界にもどってきたときが、また、あらたな淫獄の始まりだった。



「さぁ、準備はいい、サイラス?」
 帳の向こうでは、ジャハギルがサイラスの腰に水牛の両首の責め具を取り付けていた。







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