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双花蹂躙 二
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「はぁっ……!」
白い、剥きだしの臀部が頭より上になるように強いられ、ダリクにもサイラスが歯ぎしりしているのがうかがい知れる。
「なに、ぼーっとしているの? おまえも手伝いなさいよ」
マーメイに焦れたように言われ、ダリクは先ほどジャハギルがそうしていたように、サイラスの方足をひっぱりあげ、彼の羞恥をあおった。
「あ、いやだ、よせ、はなせ!」
「サイラス様、大人しくしてください。いくら昔はお貴族様で将軍様だったとはいえ、今のサイラス様は男娼なんですから、お客様に逆らってはいけませんよ」
芝居に出てくる悪党のような口調で笑みを浮かべてそんなことを言う自分は、さぞ下劣な顔をしているだろうと、ダリクは言葉とは裏腹に内心で冷静に自覚していた。
「ほう? サイラスは将軍だったのか?」
イハウが意外そうに濃い眉を上げる。
「ええ。かつてはアルディオリアの誇る美将、国王陛下の覚えもめでたく、国民の信頼あつい国一番の勇将サイラス=デルビィアス伯爵将軍ですよ」
以前のサイラスの立場を説明するダリクの口調は、悲しい詩をつぶやくようなものになっていた。
「ほほう。そのサイラス=デルビィアス伯爵将軍様が、今では娼館で客のまえに足を広げておられるのか? それも二形の。わはははは」
うっ……! こらえきれないサイラスの嗚咽の声がダリクの耳を刺すが、ダリクは無表情をよそおった。
「これこれ、泣くな。……しかし、二形でも将軍になれるものなのか?」
イハウの素朴な疑問にダリクは苦笑するしかない。
「誰もサイラス様が二形だとは気づきませんでしたよ。ご当人も隠していらしたようだし。まぁ、当たり前ですがね……。以前はもっと身体付きもしっかしりて、ちゃんと男に見えていたんですよ」
そう。細身とはいえサイラスは立派な男性に見えていた。誰ひとりサイラスの身体が半分は女だとは想像すらしなかったろう。
「剣も弓もかなりの使い手だったんです。馬術もすばらしくて。俺は……、かつてはこの人の指揮のもとで戦に行ったこともありました」
国境沿いでの敵国との小競り合いだったが、指示を出すサイラスの勇姿は今でも記憶にのこっている。その戦がかたづいた早朝、兜を取って戦死者に祈りをささげるサイラスの横顔は美神のようだった。曙光に照らされてかがやく白い肌、風になびく黄金の髪、甲冑につつまれてはいてもすらりとした肢体。世に勇将、知将は数多くあれども、これほど美しい将はいないだろう、と兵卒同士ささやきあったものだ。さらにサイラスはその類まれな美貌のうえ勇気も知性も兼ね備えていたのだ。そのうえ家柄も財もある。天はこの人をどれだけ深く愛したのか……、と祖国の詩人が歌にうたったほどだ。
だが、その天も神も、彼サイラスに与えた幸運の分だけの不幸を、充分に与えたようだ。
ダリクは皮肉な想いで、うつ伏せにされ惨めに腰をあげさせられているサイラスの白い肉体を見つめた。恥辱から逃れたくとも、肩をディリオスにおさえこまれ、片足はダリクに引き上げられ、生き恥を晒されつづけている。時折りジャハギルが面白がって、つややかな臀部を撫でまわしたり、ぴしゃり、と打ったりしている。
「ああ……、本当にきれいなお尻ねぇ。すべすべよ。あの人といい、この人といい、どうして天の神様っていうものはこうも不公平なのかしらねぇ。いっつも、限られた人ばかりえこひいきして。ああ、憎らしい。どうしてやろうかしら」
「あっ……」
ジャハギルがサイラスの臀部にふざけたように音をたてて接吻し、彼に困惑の声をあげさせる。
ジャハギルの言う〝あの人〟というのが誰のことかはダリクには見当もつかないが、その当事者が果たして本当に神にえこひいきされたのかどうかは判断のつかないところだ。
「さ、サイラス、そろそろ尻に入れられたものを出すがよい。ずっとそのままにしておくと遊びにくかろう?」
「い、いやだ! ……た、たのむから、こ、ここでは……」
人に見られて異物を出すというのが辛いのだろう。排泄行為にも似た動作をせねばならないのだから、無理もない。
だが、いずれも加虐の嗜好の強い面々と、その手下ばかりである。止めようとする者などなく、それどころか、この、見るからに気品があり、その分気位も高そうで、やや高慢な表情を見せていたサイラスの陥落を、今か今かと皆待ちのぞんでいるのだ。しかも、サイラスが祖国では将軍だったと聞いてから、イハウの細い目はいっそうねっとりと熱い情欲に燃えてきている。
「しょうのない子じゃ。では、出したくなるように手伝ってやろう。ダリクといったか? おまえ、以前はサイラスの部下だったのであろう? かつての上官の尻を揉んでやるがよい」
白い、剥きだしの臀部が頭より上になるように強いられ、ダリクにもサイラスが歯ぎしりしているのがうかがい知れる。
「なに、ぼーっとしているの? おまえも手伝いなさいよ」
マーメイに焦れたように言われ、ダリクは先ほどジャハギルがそうしていたように、サイラスの方足をひっぱりあげ、彼の羞恥をあおった。
「あ、いやだ、よせ、はなせ!」
「サイラス様、大人しくしてください。いくら昔はお貴族様で将軍様だったとはいえ、今のサイラス様は男娼なんですから、お客様に逆らってはいけませんよ」
芝居に出てくる悪党のような口調で笑みを浮かべてそんなことを言う自分は、さぞ下劣な顔をしているだろうと、ダリクは言葉とは裏腹に内心で冷静に自覚していた。
「ほう? サイラスは将軍だったのか?」
イハウが意外そうに濃い眉を上げる。
「ええ。かつてはアルディオリアの誇る美将、国王陛下の覚えもめでたく、国民の信頼あつい国一番の勇将サイラス=デルビィアス伯爵将軍ですよ」
以前のサイラスの立場を説明するダリクの口調は、悲しい詩をつぶやくようなものになっていた。
「ほほう。そのサイラス=デルビィアス伯爵将軍様が、今では娼館で客のまえに足を広げておられるのか? それも二形の。わはははは」
うっ……! こらえきれないサイラスの嗚咽の声がダリクの耳を刺すが、ダリクは無表情をよそおった。
「これこれ、泣くな。……しかし、二形でも将軍になれるものなのか?」
イハウの素朴な疑問にダリクは苦笑するしかない。
「誰もサイラス様が二形だとは気づきませんでしたよ。ご当人も隠していらしたようだし。まぁ、当たり前ですがね……。以前はもっと身体付きもしっかしりて、ちゃんと男に見えていたんですよ」
そう。細身とはいえサイラスは立派な男性に見えていた。誰ひとりサイラスの身体が半分は女だとは想像すらしなかったろう。
「剣も弓もかなりの使い手だったんです。馬術もすばらしくて。俺は……、かつてはこの人の指揮のもとで戦に行ったこともありました」
国境沿いでの敵国との小競り合いだったが、指示を出すサイラスの勇姿は今でも記憶にのこっている。その戦がかたづいた早朝、兜を取って戦死者に祈りをささげるサイラスの横顔は美神のようだった。曙光に照らされてかがやく白い肌、風になびく黄金の髪、甲冑につつまれてはいてもすらりとした肢体。世に勇将、知将は数多くあれども、これほど美しい将はいないだろう、と兵卒同士ささやきあったものだ。さらにサイラスはその類まれな美貌のうえ勇気も知性も兼ね備えていたのだ。そのうえ家柄も財もある。天はこの人をどれだけ深く愛したのか……、と祖国の詩人が歌にうたったほどだ。
だが、その天も神も、彼サイラスに与えた幸運の分だけの不幸を、充分に与えたようだ。
ダリクは皮肉な想いで、うつ伏せにされ惨めに腰をあげさせられているサイラスの白い肉体を見つめた。恥辱から逃れたくとも、肩をディリオスにおさえこまれ、片足はダリクに引き上げられ、生き恥を晒されつづけている。時折りジャハギルが面白がって、つややかな臀部を撫でまわしたり、ぴしゃり、と打ったりしている。
「ああ……、本当にきれいなお尻ねぇ。すべすべよ。あの人といい、この人といい、どうして天の神様っていうものはこうも不公平なのかしらねぇ。いっつも、限られた人ばかりえこひいきして。ああ、憎らしい。どうしてやろうかしら」
「あっ……」
ジャハギルがサイラスの臀部にふざけたように音をたてて接吻し、彼に困惑の声をあげさせる。
ジャハギルの言う〝あの人〟というのが誰のことかはダリクには見当もつかないが、その当事者が果たして本当に神にえこひいきされたのかどうかは判断のつかないところだ。
「さ、サイラス、そろそろ尻に入れられたものを出すがよい。ずっとそのままにしておくと遊びにくかろう?」
「い、いやだ! ……た、たのむから、こ、ここでは……」
人に見られて異物を出すというのが辛いのだろう。排泄行為にも似た動作をせねばならないのだから、無理もない。
だが、いずれも加虐の嗜好の強い面々と、その手下ばかりである。止めようとする者などなく、それどころか、この、見るからに気品があり、その分気位も高そうで、やや高慢な表情を見せていたサイラスの陥落を、今か今かと皆待ちのぞんでいるのだ。しかも、サイラスが祖国では将軍だったと聞いてから、イハウの細い目はいっそうねっとりと熱い情欲に燃えてきている。
「しょうのない子じゃ。では、出したくなるように手伝ってやろう。ダリクといったか? おまえ、以前はサイラスの部下だったのであろう? かつての上官の尻を揉んでやるがよい」
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