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儀式 四
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「まぁ……、殿下。すばらしいお身体ですこと」
すべてはぎとられ、隠すもののない五体を女たちの目にさらされ、ラオシンはさすがに羞恥にふるえた。女の目が怖くもある。
「きっと、ご満足なされますわ」
その言葉になにか奇妙なものを感じたが、今はそれを訊ねることもできないまま、子どものようにマーメイに手をひかれ湯船にはいる。
女たちの手で身体を洗われ、ほどよく力の抜けたあと、白絹の帯を下半身に巻かれ、すこし気が楽になる。
マーメイを先頭に、控えとなる別室にみちびかれ、真紅の絹をはった寝椅子のうえで、薔薇の香油を全身にぬられた。女たちの手が優しくラオシンの身体を揉みほぐす。
女のひとりが、月光杯に満たした酒をうやうやしくささげ、ラオシンはなんの疑いももたずそれを飲みほした。
全身がひどくだるい。だが、心地良かった。
「リリ、あれを」
「はい」
リリと呼ばれた黒い羅をまとった娘が、底のあさい幅広の、貴重品をしまうような箱を持ってくる。
なかには真珠をおもわせるような玉が山のように入っており、マーメイが、それをよく見せるように取り出す。
「東方の後宮の女たちの室をかざった珠連ですわ。美しいものでございましょう」
はるか彼方の国の美姫寵姫たちの室に張り巡らされたその珠連は、おそらくは深宮に生きる彼女たちの憂いや嫉妬の吐息、ときに激しい夜の喘ぎにあぶられてきたせいか、燭台の蝋燭の光に不思議な玉虫色にかがやいている。
マーメイは微笑むと、その珠の御簾を一本につないだ玉の紐を蝋燭の光に照らしてゆらす。
うっとりと魅入られたように見ていたラオシンは、不覚なことにまったく気づかなかった。女たちが笑いながらその玉の紐、いや玉の綱をラオシンの四肢にからめるようにしてきたときも、儀式のひとつなのか、戯れなのだろうと思って疑うことはなかった。
「おい……」
どうもこれはおかしい、そう思ったときにはすでに手足はばらばらに縛られ、石の天井とおなじく石の床にそれぞれつながれていた。天井と床にそれをとりつける滑車があったのだ。
(まさか……)
さすがにラオシンもこの状況の異常さに気づきだした。
だが、このときの彼にはまだ余裕があった。目のまえにいるのは丸腰で裸にちかい女たちばかりである。これはちょっとしたおふざけなのだろうと高をくくっていたのだ。そう思わせられたのは、マーメイの卵型の美しい色白の顔がつねに微笑んでいるせいだ。
「マ、マーメイとやら、これはなんの冗談だ?」
「ほほほほ。殿下、夜は長うございますわ。わたくしどもと遊んでくださいませ」
そこで女の誰かが玉綱をひっぱり、ラオシンの両手はいっそう高く吊りあげられるかたちになった。
「い、痛いぞ。おい、そろそろ離せ」
「離しませんよ」
マーメイの笑みに、ラオシンはまだどこかで安心していた。
だが、さらに強く腕と足を上下に、それも大きく開いたかたちにひっぱられ、さすがに腹が立ってきた。しかも帯一枚をまいた下半身ははなはだ心もとない。こんな格好で女たちのまえで戒められていることに、誇りたかい彼は不快感をおさえきれなくなってきた。
「痛いではないか。おい、いい加減にしろ、本当に怒るぞ」
眉をしかめて怒り顔をむけてみても、マーメイはじめ女たちは皆笑ってばかりで誰も玉綱をゆるめようとしない。それどころか、リリと呼ばれた女は、面白そうにラオシンの腰の布を引っ張り、彼の頬を赤らめさせた。
「お、おまえたち、いい加減に……」
「おだまり」
すべてはぎとられ、隠すもののない五体を女たちの目にさらされ、ラオシンはさすがに羞恥にふるえた。女の目が怖くもある。
「きっと、ご満足なされますわ」
その言葉になにか奇妙なものを感じたが、今はそれを訊ねることもできないまま、子どものようにマーメイに手をひかれ湯船にはいる。
女たちの手で身体を洗われ、ほどよく力の抜けたあと、白絹の帯を下半身に巻かれ、すこし気が楽になる。
マーメイを先頭に、控えとなる別室にみちびかれ、真紅の絹をはった寝椅子のうえで、薔薇の香油を全身にぬられた。女たちの手が優しくラオシンの身体を揉みほぐす。
女のひとりが、月光杯に満たした酒をうやうやしくささげ、ラオシンはなんの疑いももたずそれを飲みほした。
全身がひどくだるい。だが、心地良かった。
「リリ、あれを」
「はい」
リリと呼ばれた黒い羅をまとった娘が、底のあさい幅広の、貴重品をしまうような箱を持ってくる。
なかには真珠をおもわせるような玉が山のように入っており、マーメイが、それをよく見せるように取り出す。
「東方の後宮の女たちの室をかざった珠連ですわ。美しいものでございましょう」
はるか彼方の国の美姫寵姫たちの室に張り巡らされたその珠連は、おそらくは深宮に生きる彼女たちの憂いや嫉妬の吐息、ときに激しい夜の喘ぎにあぶられてきたせいか、燭台の蝋燭の光に不思議な玉虫色にかがやいている。
マーメイは微笑むと、その珠の御簾を一本につないだ玉の紐を蝋燭の光に照らしてゆらす。
うっとりと魅入られたように見ていたラオシンは、不覚なことにまったく気づかなかった。女たちが笑いながらその玉の紐、いや玉の綱をラオシンの四肢にからめるようにしてきたときも、儀式のひとつなのか、戯れなのだろうと思って疑うことはなかった。
「おい……」
どうもこれはおかしい、そう思ったときにはすでに手足はばらばらに縛られ、石の天井とおなじく石の床にそれぞれつながれていた。天井と床にそれをとりつける滑車があったのだ。
(まさか……)
さすがにラオシンもこの状況の異常さに気づきだした。
だが、このときの彼にはまだ余裕があった。目のまえにいるのは丸腰で裸にちかい女たちばかりである。これはちょっとしたおふざけなのだろうと高をくくっていたのだ。そう思わせられたのは、マーメイの卵型の美しい色白の顔がつねに微笑んでいるせいだ。
「マ、マーメイとやら、これはなんの冗談だ?」
「ほほほほ。殿下、夜は長うございますわ。わたくしどもと遊んでくださいませ」
そこで女の誰かが玉綱をひっぱり、ラオシンの両手はいっそう高く吊りあげられるかたちになった。
「い、痛いぞ。おい、そろそろ離せ」
「離しませんよ」
マーメイの笑みに、ラオシンはまだどこかで安心していた。
だが、さらに強く腕と足を上下に、それも大きく開いたかたちにひっぱられ、さすがに腹が立ってきた。しかも帯一枚をまいた下半身ははなはだ心もとない。こんな格好で女たちのまえで戒められていることに、誇りたかい彼は不快感をおさえきれなくなってきた。
「痛いではないか。おい、いい加減にしろ、本当に怒るぞ」
眉をしかめて怒り顔をむけてみても、マーメイはじめ女たちは皆笑ってばかりで誰も玉綱をゆるめようとしない。それどころか、リリと呼ばれた女は、面白そうにラオシンの腰の布を引っ張り、彼の頬を赤らめさせた。
「お、おまえたち、いい加減に……」
「おだまり」
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