燃ゆるローマ  ――夜光花――

文月 沙織

文字の大きさ
上 下
317 / 360

しおりを挟む
「あっ、や、やめ……!」
「ほら、言ってよ」
「……な、ない、ないんだ!」
「この期におよんでまだ体裁ぶる気なのかい? そんな嘘つくらなら、こうだよ」
「ひぃー!」
 指一本とはいえ、根本までいきなり挿入されたときの感触はたまらない。トュラクスの背で感じたものとはちがい、生身の、血と肉を持った熱い……ナルキッソスの一部なのだ。
「言えよ、ほら、何人の男をくわえ込んだんだい?」
 リィウスは言い逃れできず、震える唇で秘密の言葉を返した。
「ひ、……一人だけだ!」
 事実だった。柘榴荘で散々道具を使って嬲られはしたものの、実際に肌をかさねた相手は、今のところディオメデス一人だけなのだ。トュラクスとは、常に道具を介しての行為なので、本当の意味では交わったとは言えない。
 リィウスが知っている男は、ディオメデスだけだ……。なぜかそのことを思うと、屈辱や恥辱とは別の意味でリィウスは泣きたくなった。
 背後のナルキッソスは、数秒の沈黙のあとに、リィウスの臀部をたたくという仕打ちをした。
「ああ!」
 痛みより屈辱にリィウスは身体を震わせる。だが、背後の弟の声は冷たかった。
「嘘ついたお仕置きだよ、兄さん」
「いや、嘘ではない。彼の〝相手〟はその男と、張り型と木馬だ」
 あざけりを込めたウリュクセスの声にリィウスは瞑目する。ナルキッソスの哄笑に閉じた瞼から涙があふれる。
「へぇー、そうだったんだ。娼館にいてもそうだったんだ」
「ディオメデスがひどく執着してね、柘榴荘にいたときは、他の男には触らせなかったんだそうだ。そのあとはここへ売られてきて、もっぱらトュラクスとつがわせていたのでね。背中でね」
 番わせる、という残忍な表現に、もはや悔しさにふるえる余裕すらリィウスにはない。
「ふうん。それじゃ、僕が兄さんの二番目の男というわけだね。光栄だな」
「や、やめろ!」
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

R指定

ヤミイ
BL
ハードです。

熱のせい

yoyo
BL
体調不良で漏らしてしまう、サラリーマンカップルの話です。

こども病院の日常

moa
キャラ文芸
ここの病院は、こども病院です。 18歳以下の子供が通う病院、 診療科はたくさんあります。 内科、外科、耳鼻科、歯科、皮膚科etc… ただただ医者目線で色々な病気を治療していくだけの小説です。 恋愛要素などは一切ありません。 密着病院24時!的な感じです。 人物像などは表記していない為、読者様のご想像にお任せします。 ※泣く表現、痛い表現など嫌いな方は読むのをお控えください。 歯科以外の医療知識はそこまで詳しくないのですみませんがご了承ください。

ナースコール

wawabubu
青春
腹膜炎で緊急手術になったおれ。若い看護師さんに剃毛されるが…

処理中です...