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十一
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「いいか? どうだ?」
「あっ、は、はなせ! どけ……! 下種野郎!」
マヌグスはまた笑った。
エリニュスは、もうトュラクスは男としての自尊心をうしなったと笑っていたが、実際はけっしてそんなことはなかった。どれほど凌辱されようが、傷つけられようが、トュラクスは意地も気骨も捨てていない。その根底にあるのは不滅の誇りだ。
マヌグスは、嫌がられるとはわかっていても、己の頬を相手の顔に擦りつけた。
「ん……!」
相手の苦悶の横顔に、匂いたつような男の色気が……、あの、強い男が崩れるときにだけ立ちのぼる独特でふしぎな色香が浴場にあふれる。どんな美女にもなく、女のように抱かれる美少年や美青年にもない、本物の男だけが、その破滅のときに発する世にも稀有な色気である。今、自分は心おきなくそれを堪能しているのだ。
マヌグスははげしく欲情し、興奮した。けっして得ることのない極上の美酒を味わった気分でもあり、一生涯働いても得ることのない黄金を目の前にしているような心持ちでもある。
今の自分はまちがいなくローマでもっとも幸せな男だろう。そう思った。トュラクスに男として最大の屈辱をあたえている自分は、男として最高の地位に立っているのだ。夢がかなう喜びに、うち震えた。
「う、うぉっ! いい、いいぞ。もっと、もっとだ、もっと締めつけろ」
相手に己の熱を擦りつける。
「ああっ、よせ、」
トュラクスの悲鳴に、悦楽のあまり気が狂いそうになる。
官能の荒波にマヌグスは全身、身をまかせ、とことん没頭した。
度を越した快感に、はかりしれないほどの幸福を感じる。
幸せで、幸せで、あまりに幸せ過ぎて……なぜか寂しい。
マヌグスは一瞬、疑問に思った。なぜ、今、自分は寂しいなどと思っているのだろう。急いで、そんな弱い感情を振りはらうように、さらに下肢に力を入れた。
「あっ、は、はなせ! どけ……! 下種野郎!」
マヌグスはまた笑った。
エリニュスは、もうトュラクスは男としての自尊心をうしなったと笑っていたが、実際はけっしてそんなことはなかった。どれほど凌辱されようが、傷つけられようが、トュラクスは意地も気骨も捨てていない。その根底にあるのは不滅の誇りだ。
マヌグスは、嫌がられるとはわかっていても、己の頬を相手の顔に擦りつけた。
「ん……!」
相手の苦悶の横顔に、匂いたつような男の色気が……、あの、強い男が崩れるときにだけ立ちのぼる独特でふしぎな色香が浴場にあふれる。どんな美女にもなく、女のように抱かれる美少年や美青年にもない、本物の男だけが、その破滅のときに発する世にも稀有な色気である。今、自分は心おきなくそれを堪能しているのだ。
マヌグスははげしく欲情し、興奮した。けっして得ることのない極上の美酒を味わった気分でもあり、一生涯働いても得ることのない黄金を目の前にしているような心持ちでもある。
今の自分はまちがいなくローマでもっとも幸せな男だろう。そう思った。トュラクスに男として最大の屈辱をあたえている自分は、男として最高の地位に立っているのだ。夢がかなう喜びに、うち震えた。
「う、うぉっ! いい、いいぞ。もっと、もっとだ、もっと締めつけろ」
相手に己の熱を擦りつける。
「ああっ、よせ、」
トュラクスの悲鳴に、悦楽のあまり気が狂いそうになる。
官能の荒波にマヌグスは全身、身をまかせ、とことん没頭した。
度を越した快感に、はかりしれないほどの幸福を感じる。
幸せで、幸せで、あまりに幸せ過ぎて……なぜか寂しい。
マヌグスは一瞬、疑問に思った。なぜ、今、自分は寂しいなどと思っているのだろう。急いで、そんな弱い感情を振りはらうように、さらに下肢に力を入れた。
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