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十三
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「ご覧、おまえたち。男のなかの男と言われたローマ最高の戦士が、尻をいじられて、こんなに感じているのよ。なんてみっともない。これでも男なのかしらね」
エリニュスに煽られた兵たちが乾いた笑声をあげる。地下牢に充ちる腐敗しでよどんだ空気と、興奮のあまり立ち上るそれぞれの体臭に、リィウスは吐き気を覚えた。
「うっ、ううううっ」
官能をたかめられたトュラクスが、いや、いや、というふうに首を横に振る。
「ローマ一の戦士といっても、道具はそれほどではありませんね」
エリニュスにおもねるように一人の私兵がトュラクスを侮辱する。
「そうね。私の今までの相手のなかでは、まぁ、並みというところかしらね」
笑いを含んだ声が陰湿な批評をくりひろげる。
「ふん、こんなんで、女たちを夢中にさせたのが不思議ですね」
「いや、もしかしたら、トュラクスは女よりも男の客にもてるのかもしれんぞ」
トュラクスは黒いほどに顔を赤く染め、迫りくる恐怖か、観察者たちの冒涜にか、耐えるように歯をくいしばる。リィウスはその姿がほとんどいじらしく思えて目を潤ませた。
「おまえたち、いい加減にしろ。トュラクスはこれが一番良いのだよ。この逞しい身体に似合わぬ繊細なところが、なんとも素晴らしいんじゃないか」
カニディアが妙に真面目な顔で取りなすように言い、愛しげにトュラクスの中心を握る。
「あ! ……さ、触るな!」
「ああ……、可愛い。色も形も素晴らしい。こんなに男らしいのに……。清らかなのだね。あまり遊んだことがないのだな。こんなに男性的な肉体美だというのに、ここはまるで少年のようだ」
最後の言葉には心からの感嘆がこもっており、リィウスはなぜか自分の頬が熱くなるのを感じた。
身の置きどころなく、いたたまれない想いだ。ここにいてはいけない、見てはいけない。そうは思っても、囚われの身としては逃げることもできず、心を石にして、身を沈めるような心持でいた。
「あ、おい、……よ、止せ!」
ふいに、トュラクスはうろたえて身をよじり、あわてた。
カニディアが、彼の前にひざまずき、彼自身を口に含んだのだ。
エリニュスに煽られた兵たちが乾いた笑声をあげる。地下牢に充ちる腐敗しでよどんだ空気と、興奮のあまり立ち上るそれぞれの体臭に、リィウスは吐き気を覚えた。
「うっ、ううううっ」
官能をたかめられたトュラクスが、いや、いや、というふうに首を横に振る。
「ローマ一の戦士といっても、道具はそれほどではありませんね」
エリニュスにおもねるように一人の私兵がトュラクスを侮辱する。
「そうね。私の今までの相手のなかでは、まぁ、並みというところかしらね」
笑いを含んだ声が陰湿な批評をくりひろげる。
「ふん、こんなんで、女たちを夢中にさせたのが不思議ですね」
「いや、もしかしたら、トュラクスは女よりも男の客にもてるのかもしれんぞ」
トュラクスは黒いほどに顔を赤く染め、迫りくる恐怖か、観察者たちの冒涜にか、耐えるように歯をくいしばる。リィウスはその姿がほとんどいじらしく思えて目を潤ませた。
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「あ! ……さ、触るな!」
「ああ……、可愛い。色も形も素晴らしい。こんなに男らしいのに……。清らかなのだね。あまり遊んだことがないのだな。こんなに男性的な肉体美だというのに、ここはまるで少年のようだ」
最後の言葉には心からの感嘆がこもっており、リィウスはなぜか自分の頬が熱くなるのを感じた。
身の置きどころなく、いたたまれない想いだ。ここにいてはいけない、見てはいけない。そうは思っても、囚われの身としては逃げることもできず、心を石にして、身を沈めるような心持でいた。
「あ、おい、……よ、止せ!」
ふいに、トュラクスはうろたえて身をよじり、あわてた。
カニディアが、彼の前にひざまずき、彼自身を口に含んだのだ。
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