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十二
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ウリュクセスが馬でも制するように手を振る。
「おいおい、お手柔らかに頼むよ、エリニュス。明日の宴の主役なのだからね。彼が目当でくる女性客もいるんだよ」
おそらくは、金をとってトュラクスに気がある金持ちの女に売りつけるのだろう。もともと剣闘士はそうやって金持ちの女客や、稀に男の相手をすることも仕事のうちとしていた。
世間には、強い男に抱かれたいという裕福な男もいれば、強い男を抱きたいという趣味の男もいる。後者はなかなか剣闘士の方で承知しないが、そこはやはり人の好みというものは十人十色で、嗜好が合う者なら、金とひきかえに権力者の期待に応えもするし、金で縛られている身としては、強制されれば応じぬわけにもいかない。
だが、トュラクスは色を売らない、利用ししないことで有名だった。その清廉な戦士がここまで侮辱されても耐えなければならないのだ。
「立たせるのよ」
男たちに身体を引きずられるようにして、一糸まとわぬ姿でトュラクスは立たされる。おさえつけられていたときより呼吸は楽になったようだが、その分、赤裸々な姿が人目にさらされる。
彼の背後にまわったエリニュスは、ウリュクセスの忠告など耳も貸さず、柄を持っている右手を動かした。
「ぐう!」
痛みにこぼれるたトュラクスの声を満足そうに聞き、エリニュスはさらに巧妙に手を動かす。動きはゆるく、長くなる。
「うう……! くっ……」
トュラクスはふたたび頬を赤く染めた。頬のみならず、飴色の肌を照りかがやかせ、全身を充血させ、苦痛と、もどかしさの入り交じった吐息をはなつ。
「はぁ……。ああ……!」
「ほほほほほほ。先ほどの意地はどこへ行ったのかしらね?」
どれほど怒ってはいても、けっして力まかせに相手をいたぶろうとはしないところが、エリニュスの狡さと賢さである。千歳を経た娼婦のような老獪な手管で男を籠絡する。
トュラクスは額も背もしとどに汗に濡らし、隠すもののない股間の昂りを、卑しい女や私兵たちに鑑賞されてしまう。
「おいおい、お手柔らかに頼むよ、エリニュス。明日の宴の主役なのだからね。彼が目当でくる女性客もいるんだよ」
おそらくは、金をとってトュラクスに気がある金持ちの女に売りつけるのだろう。もともと剣闘士はそうやって金持ちの女客や、稀に男の相手をすることも仕事のうちとしていた。
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だが、トュラクスは色を売らない、利用ししないことで有名だった。その清廉な戦士がここまで侮辱されても耐えなければならないのだ。
「立たせるのよ」
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「ぐう!」
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「うう……! くっ……」
トュラクスはふたたび頬を赤く染めた。頬のみならず、飴色の肌を照りかがやかせ、全身を充血させ、苦痛と、もどかしさの入り交じった吐息をはなつ。
「はぁ……。ああ……!」
「ほほほほほほ。先ほどの意地はどこへ行ったのかしらね?」
どれほど怒ってはいても、けっして力まかせに相手をいたぶろうとはしないところが、エリニュスの狡さと賢さである。千歳を経た娼婦のような老獪な手管で男を籠絡する。
トュラクスは額も背もしとどに汗に濡らし、隠すもののない股間の昂りを、卑しい女や私兵たちに鑑賞されてしまう。
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