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三
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リィウスはその盆の上に乗っているものを見て悲鳴をあげそうになった。
柘榴荘でも見たことがある。象牙の道具だ。
だが、その道具は、タルペイアがリィウスに使ったものとは、別の用途のために造られたもののようだ。
双頭の蛇のように、両方に道具の先が伸びているのだ。黒いなめし皮の帯のようなものが着けられており、だいたい見ただけで使い方がわかるものだ。
だが、それは……、リィウスが話に聞いたものでは……。リィウスは記憶を呼びもどしてみた。
柘榴荘で、客の求めに応じて娼婦たちが似た道具を使って遊んでいるのだとタルペイアから聞いたことはあるが……。
「面白いでしょう? 本当なら女同士がたわむれるときに使うものなのだけれど。ふふふふ……これをね、おまえたちに使わせてやるわ」
一瞬、リィウスは意味がわからなかった。が、次の瞬間、エリニュスの意図することを悟って――柘榴荘で過ごした日々は、彼を無垢なままにはさせてくれなかったのだ――、耳たぶまで熱を感じた。
「な……、そんな!」
「ほほほほほ。どうしたのよ、そんなに顔を赤くして。判るのでしょう? これの使い方が?」
エリニュスは淫らな道具を平然と手にし、もてあそぶ。
「さぁ、二人ともこっちへ来て立つのよ。トュラクス、何をしているの? さっさと立つのよ」
トュラクスは座ったまま女を睨みつけた。
「なによ、その顔は?」
エリニュスは怒気をあらわに、剣闘士を燃える瑠璃の瞳で睨みつけた。
「言いたいことがあるなら、お言い!」
「……呆れているのだ」
こんな状況でもトュラクスの声は、聞く者を圧倒するような迫力と、ある種の威厳をふくんでいる。闘技場で幾度となく命のやりとりをしてきた男だけが持つ、胆力にあふれているのだ。手酷い辱しめも、辛い地下牢暮らしも、彼の鋼の心を打ち砕くことはできなかった。
「よくもまぁ、そこまで下種なことを考えつく女だな、と。いっそ、感心する。おまえは、元は巫女だろうに、どうやってそんな下劣なことを覚えてきたのだ?」
柘榴荘でも見たことがある。象牙の道具だ。
だが、その道具は、タルペイアがリィウスに使ったものとは、別の用途のために造られたもののようだ。
双頭の蛇のように、両方に道具の先が伸びているのだ。黒いなめし皮の帯のようなものが着けられており、だいたい見ただけで使い方がわかるものだ。
だが、それは……、リィウスが話に聞いたものでは……。リィウスは記憶を呼びもどしてみた。
柘榴荘で、客の求めに応じて娼婦たちが似た道具を使って遊んでいるのだとタルペイアから聞いたことはあるが……。
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一瞬、リィウスは意味がわからなかった。が、次の瞬間、エリニュスの意図することを悟って――柘榴荘で過ごした日々は、彼を無垢なままにはさせてくれなかったのだ――、耳たぶまで熱を感じた。
「な……、そんな!」
「ほほほほほ。どうしたのよ、そんなに顔を赤くして。判るのでしょう? これの使い方が?」
エリニュスは淫らな道具を平然と手にし、もてあそぶ。
「さぁ、二人ともこっちへ来て立つのよ。トュラクス、何をしているの? さっさと立つのよ」
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「なによ、その顔は?」
エリニュスは怒気をあらわに、剣闘士を燃える瑠璃の瞳で睨みつけた。
「言いたいことがあるなら、お言い!」
「……呆れているのだ」
こんな状況でもトュラクスの声は、聞く者を圧倒するような迫力と、ある種の威厳をふくんでいる。闘技場で幾度となく命のやりとりをしてきた男だけが持つ、胆力にあふれているのだ。手酷い辱しめも、辛い地下牢暮らしも、彼の鋼の心を打ち砕くことはできなかった。
「よくもまぁ、そこまで下種なことを考えつく女だな、と。いっそ、感心する。おまえは、元は巫女だろうに、どうやってそんな下劣なことを覚えてきたのだ?」
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