燃ゆるローマ  ――夜光花――

文月 沙織

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「ひっ……!」
 咄嗟に、「そこは止めてくれ」と女のような情けない哀願の言葉を吐いてしまった自分が、リィウスは悔しくてならない。案の定、ウリュクセスの笑いを誘った。
「可愛いね。まるで女のようなことを言う。さ、もうちょっと頑張ってごらん。ほうら、もうあとわずかだよ」
 リィウスは首を横に振った。
 だが、いくらリィウスが抗ってみても、男たちの手はゆるしくれず、左右からおさえこまれ、生命そのものの分身はウリュクセスににぎられ、しかも下からは、剣闘士が背で攻めてくるのだ。
 勿論、トュラクスだとてこんなことはしたくないだろうが、ウリュクセスがせかすようにトュラクスの臀部をはたくのだ。本当に馬にするような態度と仕草だった。
 凄まじい圧迫感に、リィウスは歯を食いしばって泣いていた。
 だが、本当に辛いのは、いつしかこの苦しさが鈍くなり、かわりに身体の中心から湧きあがってくる奇妙な、もどかしい熱の誕生と芽生えである。
 この熱は、いったいどこかる来るのか。己の身体のなかに、この淫らな熱を生み出す土壌があったことが、リィウスを打ちのめす。
(あっ……ああ! ど、どうしよう!)
 身体が熱い。太腿の下に感じるトュラクスの身体も熱い。額や背ににじむ汗は自分の熱のせいなのか、トュラクスの持つ熱のせいなのか。トュラスクスのせいだと、リィウスのなかの弱さは、つい訴えたくなる。
(そんな、そんなふうに動いたら……駄目だ)
 すでに……、トュラクスはこの異常な行為を幾度か強いられ、経験していたのだろう。今日が初めてではないということは、動かす背や、腰、臀部のもたらす、ふしぎな波の心地良さが、教えてくれる。相手の官能を引き出し、高めるやり方を、徹底的に叩き込まれたようだ。それを学ぶために、どれだけの苦痛をトュラクスが味わったかもしのばれる。
 だが、今はトュラクスに同情する余裕はリィウスにはなかった。
(あ……、う、動かないでくれ!)
 切なげに首を振っていた。
 リィウスはこの状況に焦らされてきていた。
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