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六
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だが、自分は、今、トュラクスのあられもない姿を見て、奇妙な熱情と情動に翻弄されはじめているのだ。女の裸を見て欲望に揺れる愚かな男たちのように。
(こんな……こんな……)
自分自身に裏切られたような複雑な気分だった。
中央の石の舞台の上で、小人はますます調子に乗って、トュラクスの腰をおおっている布を剝ぎ取ろうとする。
「ううっ……、ううっ!」
人一倍の肉体美を誇る青年が、乙女のように羞恥にもだえる姿は、なんとも見る者の嗜虐欲をそそる。男色趣味のない男たちですら熱くなり、女たちは目元を染めて魅入られている。
リィウスもまた、トュラクスのかもしだす強烈な媚薬のような体臭に酔っていった。
トュラクスを助けてやりたい、庇ってやりたい、という想いにかられる一方で、もっと虐めてやりたい、困らせて、トュラクスの羞恥を刺激し、あのいたたまれなさそうな表情を長く堪能したいという、未だかつて経験したこともない――というより、そもそも自分の内にそんな異常な欲望があったということすら気づかなかった――加虐の欲求にうなされそうになる。
天上の神々は、どういうわけかトュラクスに素晴らしい身体と、秀麗な容貌をあたえ、さらに、幾多の戦いを経ても決して擦れることなき、この時代の成人男性にはあるまじきほどに、永遠に初心な魂をあたえたようだ。
これほどの辱しめを受けていても、尚トュラクスは誇りと廉恥の心をなくしていないのだ。その証しに蜜色の頬を赤く燃やしている。
むさくるしく荒っぽい戦士たちのなかにあって、痛々しいほどに初々しい情感を備えているのだ。
それらの性質の美点がどういうわけか悪くかさなり、運命神の悪戯によって、トュラクスはこのような地獄の宴に導かれてしまったのかもしれない。リィウスがそうであったように。
(ああ……)
痛ましさにリィウスの胸は疼いた。
だが、トュラクス同様、リィウスも運命神に弄ばれているか弱い人間の一人であった。
頬を熱く燃やしてうなだれているリィウスの心情をすべて見抜いたように、ウリュクセスが声をかけてきた。
(こんな……こんな……)
自分自身に裏切られたような複雑な気分だった。
中央の石の舞台の上で、小人はますます調子に乗って、トュラクスの腰をおおっている布を剝ぎ取ろうとする。
「ううっ……、ううっ!」
人一倍の肉体美を誇る青年が、乙女のように羞恥にもだえる姿は、なんとも見る者の嗜虐欲をそそる。男色趣味のない男たちですら熱くなり、女たちは目元を染めて魅入られている。
リィウスもまた、トュラクスのかもしだす強烈な媚薬のような体臭に酔っていった。
トュラクスを助けてやりたい、庇ってやりたい、という想いにかられる一方で、もっと虐めてやりたい、困らせて、トュラクスの羞恥を刺激し、あのいたたまれなさそうな表情を長く堪能したいという、未だかつて経験したこともない――というより、そもそも自分の内にそんな異常な欲望があったということすら気づかなかった――加虐の欲求にうなされそうになる。
天上の神々は、どういうわけかトュラクスに素晴らしい身体と、秀麗な容貌をあたえ、さらに、幾多の戦いを経ても決して擦れることなき、この時代の成人男性にはあるまじきほどに、永遠に初心な魂をあたえたようだ。
これほどの辱しめを受けていても、尚トュラクスは誇りと廉恥の心をなくしていないのだ。その証しに蜜色の頬を赤く燃やしている。
むさくるしく荒っぽい戦士たちのなかにあって、痛々しいほどに初々しい情感を備えているのだ。
それらの性質の美点がどういうわけか悪くかさなり、運命神の悪戯によって、トュラクスはこのような地獄の宴に導かれてしまったのかもしれない。リィウスがそうであったように。
(ああ……)
痛ましさにリィウスの胸は疼いた。
だが、トュラクス同様、リィウスも運命神に弄ばれているか弱い人間の一人であった。
頬を熱く燃やしてうなだれているリィウスの心情をすべて見抜いたように、ウリュクセスが声をかけてきた。
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