203 / 360
十
しおりを挟む
人の波が少し動いた。
「おい、始まるぞ」
誰かが呟く。
ウリュクセスがヒユパティアの手を取って進み、三人の小人相手に断末魔のあえぎを吐いているアキリアの前に立った。
「アキリアよ、ヒュパティアがおまえの為ならなんでもすると言っているぞ」
ウリュクセスが微笑を浮かべて告げる。だが、アキリアはけっして彼に目を向けようとはしない。
「ヒュパティア、愚かなことを言ってないで早くここから去れ!」
小人たちに嬲られながらも、アキリアからは凛然たる気迫がただよってくる。リィウスは、このどん底の闇の世界にほのかな光を見るような切ない想いで彼女を見ていた。
敗れても、けっして敗れることなき者の持つ気概と気高さがアキリアの全身からあふれてくる。
だが、それがいっそうウリュクセスのような残忍な男の欲望をあおることに彼女は気づいていない。いっそ、彼女が弱さを見せて泣き出したり哀願したりした方が、まだ救われる可能性があったろう。
「ヒュパティア、では、おまえが今宵のお客様を満足させるために、アキリアの代わりにこいつらの相手をするか?」
今しも、アキリアの尻のはざまに鼻をこすりつけていた剣闘士の小人が破顔した。
「御館様、俺にこんなすごい美人をくれるんですか?」
マルクスの言葉にヒュパティアの背中がこわばったのが、リィウスからはしっかりと見えた。
なんとかして恋人の窮地を救ってやりたいのだろうが、その代償は大きい。
「どうする、ヒュパティア。おまえがマルクスたちの相手をこの場でするのなら、アキリアはゆるしてやるぞ」
「よせ! 相手にするな、ヒュパティア! あうっ!」
パシン、とマルクスという小人戦士が平手でアキリアの臀部をたたく。
「うるさいぞ、女」
どっ、と人々がわき、嘲笑がたつ。
「うう……!」
頭より突き上げる姿勢にされている臀部は、自分を負かした小人に打擲されて、屈辱と怒りのあまりふるえている。その残酷で嗜虐的な様子が、また観客の心をわかす。
「おい、始まるぞ」
誰かが呟く。
ウリュクセスがヒユパティアの手を取って進み、三人の小人相手に断末魔のあえぎを吐いているアキリアの前に立った。
「アキリアよ、ヒュパティアがおまえの為ならなんでもすると言っているぞ」
ウリュクセスが微笑を浮かべて告げる。だが、アキリアはけっして彼に目を向けようとはしない。
「ヒュパティア、愚かなことを言ってないで早くここから去れ!」
小人たちに嬲られながらも、アキリアからは凛然たる気迫がただよってくる。リィウスは、このどん底の闇の世界にほのかな光を見るような切ない想いで彼女を見ていた。
敗れても、けっして敗れることなき者の持つ気概と気高さがアキリアの全身からあふれてくる。
だが、それがいっそうウリュクセスのような残忍な男の欲望をあおることに彼女は気づいていない。いっそ、彼女が弱さを見せて泣き出したり哀願したりした方が、まだ救われる可能性があったろう。
「ヒュパティア、では、おまえが今宵のお客様を満足させるために、アキリアの代わりにこいつらの相手をするか?」
今しも、アキリアの尻のはざまに鼻をこすりつけていた剣闘士の小人が破顔した。
「御館様、俺にこんなすごい美人をくれるんですか?」
マルクスの言葉にヒュパティアの背中がこわばったのが、リィウスからはしっかりと見えた。
なんとかして恋人の窮地を救ってやりたいのだろうが、その代償は大きい。
「どうする、ヒュパティア。おまえがマルクスたちの相手をこの場でするのなら、アキリアはゆるしてやるぞ」
「よせ! 相手にするな、ヒュパティア! あうっ!」
パシン、とマルクスという小人戦士が平手でアキリアの臀部をたたく。
「うるさいぞ、女」
どっ、と人々がわき、嘲笑がたつ。
「うう……!」
頭より突き上げる姿勢にされている臀部は、自分を負かした小人に打擲されて、屈辱と怒りのあまりふるえている。その残酷で嗜虐的な様子が、また観客の心をわかす。
0
お気に入りに追加
162
あなたにおすすめの小説



どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。


こども病院の日常
moa
キャラ文芸
ここの病院は、こども病院です。
18歳以下の子供が通う病院、
診療科はたくさんあります。
内科、外科、耳鼻科、歯科、皮膚科etc…
ただただ医者目線で色々な病気を治療していくだけの小説です。
恋愛要素などは一切ありません。
密着病院24時!的な感じです。
人物像などは表記していない為、読者様のご想像にお任せします。
※泣く表現、痛い表現など嫌いな方は読むのをお控えください。
歯科以外の医療知識はそこまで詳しくないのですみませんがご了承ください。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる