195 / 360
二
しおりを挟む
余興でこういった試合を行うことがある。剣闘は通常、男同士、女同士だが、稀に身体の小さい男と、女を戦わせて、どちらが勝つか人々は賭けあう。通常な男女の戦いなら、男に有利なのは当たり前だが、小人の男となると、判断がつきにくく、賭けは盛り上がる。
女戦士の腕はなかなかのものだった。敵もかなり修練をつんでいるらしく、負けていない。剣が交わるに合わせて閃光が薄闇にきらめく。
どれぐらいたったか、やがて両者とも疲れが出てきたようだ。先に隙が出たのは小人の方だった。
「うう!」
彼は転んだ。
女戦士がとどめを刺そうとする。
闘技場で血が流れ、命が失われるのは日常茶飯事だった。毎日のように、衆人環視のなかで戦士たちは文字どおり死に物狂いの戦いをくりひろげ、散っていった。過激な見世物を好むローマ市民を楽しませるために。
「いいぞ! やれ! 殺せ!」
一番前で見ていた太った客の男が叫ぶ。声に合わせて周囲の見物人たちも騒ぐ。
女戦士の剣が、小人の剣を跳ね飛ばした。音をたてて、主の手から落ちた剣が転がる。
女戦士が振りかぶった剣から、かろうじて逃れた小人は、ふところから短剣を取りだした。女戦士にとっては予想外だったらしい。彼女は一瞬、狼狽えてしまった。
「おお!」
迷いを見せた剣先から逃れた小人は、女戦士の脚におのれの短剣を見舞った。
「あうっ!」
女戦士がよろめく。彼女の剣が今度は転がった。
勝負はついた、とリィウスは思ったが、その後の展開は、今度はリィウスの予想を超えていた。
石の闘技場、というか、舞台の上に、もうひとつの影があらわれた。
さらに、もうひとつ。二人とも身長が小人と同じぐらいだ。敢えて、こういう人間を選んで出したのだろう。
青銅のシンバルが鳴り響いた。
「皆様、ご覧のとおり、今宵の勝者は小人のマルクス!」
甲高い女の声が告げた。
幾分しらじらしい喝采が、さざ波のように夜の庭園におこる。
女戦士の腕はなかなかのものだった。敵もかなり修練をつんでいるらしく、負けていない。剣が交わるに合わせて閃光が薄闇にきらめく。
どれぐらいたったか、やがて両者とも疲れが出てきたようだ。先に隙が出たのは小人の方だった。
「うう!」
彼は転んだ。
女戦士がとどめを刺そうとする。
闘技場で血が流れ、命が失われるのは日常茶飯事だった。毎日のように、衆人環視のなかで戦士たちは文字どおり死に物狂いの戦いをくりひろげ、散っていった。過激な見世物を好むローマ市民を楽しませるために。
「いいぞ! やれ! 殺せ!」
一番前で見ていた太った客の男が叫ぶ。声に合わせて周囲の見物人たちも騒ぐ。
女戦士の剣が、小人の剣を跳ね飛ばした。音をたてて、主の手から落ちた剣が転がる。
女戦士が振りかぶった剣から、かろうじて逃れた小人は、ふところから短剣を取りだした。女戦士にとっては予想外だったらしい。彼女は一瞬、狼狽えてしまった。
「おお!」
迷いを見せた剣先から逃れた小人は、女戦士の脚におのれの短剣を見舞った。
「あうっ!」
女戦士がよろめく。彼女の剣が今度は転がった。
勝負はついた、とリィウスは思ったが、その後の展開は、今度はリィウスの予想を超えていた。
石の闘技場、というか、舞台の上に、もうひとつの影があらわれた。
さらに、もうひとつ。二人とも身長が小人と同じぐらいだ。敢えて、こういう人間を選んで出したのだろう。
青銅のシンバルが鳴り響いた。
「皆様、ご覧のとおり、今宵の勝者は小人のマルクス!」
甲高い女の声が告げた。
幾分しらじらしい喝采が、さざ波のように夜の庭園におこる。
0
お気に入りに追加
162
あなたにおすすめの小説



どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。


こども病院の日常
moa
キャラ文芸
ここの病院は、こども病院です。
18歳以下の子供が通う病院、
診療科はたくさんあります。
内科、外科、耳鼻科、歯科、皮膚科etc…
ただただ医者目線で色々な病気を治療していくだけの小説です。
恋愛要素などは一切ありません。
密着病院24時!的な感じです。
人物像などは表記していない為、読者様のご想像にお任せします。
※泣く表現、痛い表現など嫌いな方は読むのをお控えください。
歯科以外の医療知識はそこまで詳しくないのですみませんがご了承ください。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる