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三
しおりを挟む「あっ、ああ! そ、そこ! そこ、もっと!」
アンキセウスは額に汗を浮かべながら、主人の求めに応じて手を動かした。
「ちがう! そこじゃないってば!」
いらだたしげにナルキッソスが叫ぶように言う。
アンキセウスは、手にしていた青銅の張型を投げつけたくなった。いったい、どれぐらいこんな不毛な行為をしていたろう。
壁際の燭台の蝋燭がすでに半分ほど溶けている。
「ああ! もう、いいよ! 下手くそ!」
癇性なナルキッソスは、アンキセウスの腕をはたくと、みずから淫らな道具を手にし、己の秘部にあてがう。
「うう……ん!」
恥ずかしげもなくアンキセウスの見ている前で脚をひろげ、おのれの蕾に道具を当て、はしたない行為をくりひろげた。
もはや、それを見て驚くことも、蔑むこともない。アンキセウスは、すっかりこの傍若無人の主の常軌を越した態度に慣れきってしまっていた。
(自分でしてくれるなら、こっちは楽だ)
内心、苦笑した。
最近のナルキッソスは、道具で快を得ることに夢中になっており、生身の男を相手にするよりも、そのための道具をあつめて試してみることに見境がなくなっている。
「はぁ! あああっ!」
両手を背後に伸ばし、道具を扱いながら、みずからの肉体を自分自身で追い詰める、羞恥のかけらも持たないナルキッソスのすがたは淫乱そのものだ。いくら召使は人間あつかいされない時代のこととはいえ、他人の目があるところで、これは異様である。歓喜を秘めたその表情は、美しいことは美しいのだが、壮絶なものを感じさせ、アンキセウスをほとんど怯えさせた。
「うう! あうっ! あああっ! あ、いい!」
凄絶な表情にアンキセウスは息を呑んだ。海千山千の娼婦よりもすさまじい。
(本当に、どうしょうもない色きちがいだな、こいつは)
すでに主にたいする忠誠心などとっくに失くしてしまっている――というより、ナルキッソスを主と思ったことは一度もなかった――アンキセウスにとって、目の前で自慰行為に没頭している少年は、最低の男娼にしか見えない。
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