燃ゆるローマ  ――夜光花――

文月 沙織

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 首筋にも胸にも、引きしまった腹にも、極小の水晶のような汗粒が浮いてディオメデスの目を刺激する。食いしばるように噛みしめている並びの良い歯は、ほんのり色を持った桜貝のようだ。ますますディオメデスの興奮はたかまる。
 はずかしめられて羞恥にあえいで、苦痛に呻き、なぜこの男はこうまで美しいのか。ディオメデスは内心首をひねっていた。そして、何故自分はこうまで執着するのか。
 股間が痛いほどに疼く。まるで初体験に焦って緊張している少年のようだとまた内心苦笑した。
「もっと脚を開け。まだ開けるだろう?」
「ああっ!」
 いや、いや、とリィウスがさらに首を横に振るさまに、いっそうの嗜虐欲をかきたてられ、ディオメデスは残酷になっていくのを止められない。
(おまえがいけないんだぞ。おまえが……)
 そうだ、リィウスが悪いのだ。こんなにもなまめかしく、官能的で、匂いたつような色気にあふれて、それでいて初心うぶで……。ディオメデスは理性をうしなっていく。
 荒々しく、みずからの衣を脱ぎ捨てると、野性のたかぶりを隠すこともなく、獣にもどって獲物をもとめる。
「ああっ!」
 リィウスの蒼い目が悲しげに潤む。けれど、どこかしら甘やかな官能を秘めて、己をむさぼろうとする男を待っている、ように見えるのはディオメデスの願望だったのか。
「こら、逃げるな!」
 この期におよんで褥の上で抗い、逃れようとするかつての学友を、ディオメデスは笑いながらその肢体を下にして抱き込む。
(逃がすものか。絶対に!)
 世にも美しいこの高貴な男娼は、自分だけのものなのだ、と自分自身に声に出さずにディオメデスは叫んでいた。
「いいな? いくぞ」
 両脚をつかみ、広げさせる。
「あっ、ま、待って、待ってくれ!」
「駄目だ、これ以上待てるか!」
 互いに叫びあいながら、互いの肉の熱さを感じ合う。
「うう……!」
 後ろの園は、すでに充分うるおい、熱くたぎっている。凌辱者を受け入れる準備はすでにととのっていたのだ。
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