燃ゆるローマ  ――夜光花――

文月 沙織

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「あっ! ああっ、ああっ!」
 左右からアスクラたちに支えられる形で、リィウスは馬の背の突起物に犯されていく。
 それだけでも死ぬほど恐ろしい刺激を感じているのに、そこへさらに追い打ちをかけるようにタルペイアの指が股間をまさぐる。
「よせ! よせ! 嫌だ! こんなこと……嫌だ!」
 幼児のようになりふりかまわず、泣きじゃくりながらリィウスは抵抗するが、二人の屈強な宦官たちからは逃れることができず、固い道具によって秘花を散らされようとしていた。同時に前方の若芽も淫婦の手によって摘まれてしまう。
「ふふふふふ。可愛いわぁ」
「ああ……!」
 リィウスは、我知らず天をあおぐようにのけぞった。鳶色の髪がうなじにからまる。水晶の粒のような汗が毛先から、背中へと伝う。
 先ほどのサラミスのように、今はリィウスが怪物にささげられる悲劇の王女アンドロメダだった。もしくは、冷酷な父の勝利のために生贄にされた悲運の王女イーピゲネイアか。
 いずれにしろ、往古の薄幸の貴人をおもわせるような、持って生まれた美しさと気品は、これほど異常なはずかしめをあたえられていても、少しも崩れることも汚されることもなく、周囲の観察者たちの目を強烈に引きつけ、熱くさせた。
「動くなよ。暴れると、傷ついてしまうぞ」  
 アスクラの声は真剣だった。表情も、いつになく神妙だ。
「じっとしていろ」
「ああ……」 
 リィウスは現実から逃れるように目を閉じた。響いてくるアスクラの声に、まるで彼に犯されているような奇妙な錯覚をおぼえる。
「そっと、そっとだぞ」
 向かいがわの朋輩に命じるアスクラの声から、けっしてリィウスを傷つけないようにと細心の注意を払っていることが知れる。
「やめ……、やめ……」
「大丈夫だ。じっとしていろ。じきに良くなる」
 体内を穿うがつ異物の存在に、もはや何も考えられず、リィウスはただ首を横に振りつづけるしかない。
「最初のところは入ったぞ。あと少しだ」
「はぁ……!」
 男の象徴を亡くした閹人えんじんの手によって、リィウスは犯され、女にされようとしていた。
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