燃ゆるローマ  ――夜光花――

文月 沙織

文字の大きさ
上 下
120 / 360

しおりを挟む
「いやいや、本当にわからのんだよ。なぜ娼館にこんな馬の彫刻品があるのかな? しかも、背中のその道具はなんに使うのかね?」
「あら、いやだ。もう、しょうがない」
 そんな会話をする二人から、どろどろと濁った風が吹いてきそうだ。リィウスは嫌悪感に吐きたくなった。
 やはりウリュクセスという男は残忍なものを秘めた恐ろしい男だということがわかってきた。そしてその恐ろしい男と、同じぐらい残酷な女を前にして、今やリィウスは身に迫ってくる恐怖と必死にたたかっていた。
 泣きだしてはいけない。逃げ出すこともできない。それはわかっているが、では、どうすればいいのだ。
「本当にわからんのだよ。教えてくれないかね?」
「ほほほほ。では、使い方をお目にかけましょう」
 まさか……という凄まじい恐怖がリィウスを押しつぶす。
「さ、リィウス、今宵のお客様がご所望よ。いらっしゃい」
「わ、私には……」
 リィウスは咄嗟に衣の袖で女のように口をおおっていた。
「駄目よ、お客様のお望みは叶えてさしあげるのが、私たち柘榴荘ではたらく者たちの勤めよ。さ、」
 言いながら、タルペイアは馬の背にある黒い突起物を、ほそい指で撫であげた。
 男根をかたどった石や木の置物は、この時代めずらしくはない。男性器は命の源、生命力そのものと見なされ、ごく一般家庭でも、家の守り神をまつるほこらに飾られてあったりする。男根の模造品は、かならずしも下卑た意味にとられるものではない。
 だが、この場合は、まちがいなく猥褻な目的のためにその器物は存在感を放っていた。
 タルペイアは意味ありげな仕草でそれを片手の指で包みこむようにする。
 黒水晶モリオンを研磨して作りあげられた、なかなか見事な工芸品である。青黒く艶光つやびかりして、まるで命があるようで、今にもタルペイアの愛撫に大きくなりそうだ。
 タルペイアが、もう片方の手を伸ばし、先端をつまむような仕草をした瞬間、リィウスはおぞましさに悲鳴をあげそうになった。見ていられない。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

R指定

ヤミイ
BL
ハードです。

熱のせい

yoyo
BL
体調不良で漏らしてしまう、サラリーマンカップルの話です。

こども病院の日常

moa
キャラ文芸
ここの病院は、こども病院です。 18歳以下の子供が通う病院、 診療科はたくさんあります。 内科、外科、耳鼻科、歯科、皮膚科etc… ただただ医者目線で色々な病気を治療していくだけの小説です。 恋愛要素などは一切ありません。 密着病院24時!的な感じです。 人物像などは表記していない為、読者様のご想像にお任せします。 ※泣く表現、痛い表現など嫌いな方は読むのをお控えください。 歯科以外の医療知識はそこまで詳しくないのですみませんがご了承ください。

ナースコール

wawabubu
青春
腹膜炎で緊急手術になったおれ。若い看護師さんに剃毛されるが…

処理中です...