燃ゆるローマ  ――夜光花――

文月 沙織

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 かなり乱れた生活のなかにあっても、ディオメデスは武芸の鍛錬は手を抜いてこなかった。  けっして甘やかされただけの貴族の遊蕩児ほうとうじではない。その一筋縄ひとすじなわではいかない彼が、あらんかぎりの太々しさと猛々しさを匂わせ、目の前の獲物に牙をむける。
「こい」
「い、いや……」
 有無をいわさず、自分の膝上にリイゥスを引き上げる。胡坐をかくようにした脚のうえに乗せられたリィウスは、あられもなく膝をひらかれ、またもディオメデスの腰をまたぐような格好を強いられ、頬を染めた。
「じっとしていろよ」
 ふたたびディオメデスの指はリィウスの禁断の園を蹂躙する。
「うううう」
「ほら、俺の首にしがみつけ。そうだ、腕を伸ばせ」
「い、いやだ!」
 リィウスは聞き分けない幼児のように、首を横にふる。
「逆らうな。なんべんも言わせるな。今夜、おまえは俺のものだ」
「ああ……」
 強引に抱きつかせると、たがいの胸が直にふれあう。その熱さがまたリィウスをやるせなくさせるようで、切なげにに首をふる。
 その様は、海千山千の手練てだれの娼婦ですら持ちえぬ壮絶な色香をはなち、それでいて咲きめの薔薇の蕾のような乙女の純情無垢ぶりを思わせ、男を狂わせる。
(これはたいした上玉だ。とんだ掘り出しものだな)
 ディオメデスは感心し、舌を巻く。そして、自分がこの男の初めて相手となれた幸運にほとんど感激していた。
「いい子だな」
 右手でリィウスの臀部をまさぐりながら、ディオメデスは下半身にからみついている己の衣をみずから引きはがした。腹も、太腿も、脚もじかに相手の肌に触れ、熱を感じあわせる。
「はぁっ……」
 左手でリィウス自身をまさぐり、ゆるく愛撫をほどこすと、リィウスの頬にあらたな涙がつたう。
「可愛い……。おまえ、本当に可愛いな」
 ふるえる唇を吸った。一瞬、おびえて身をすくませたリィウスの背を、逃がさぬように力を入れて抱きすくめる。
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