燃ゆるローマ  ――夜光花――

文月 沙織

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十一

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 我慢くらべのような時が暗い水底のような世界でつづき、先に根を上げたのはリィウスだった。寝床においての性技での渡りあいとなると、リィウスは性格的にも経験からも、ディオメデスの敵ではない。
「ああ……! ああ……!」
 それでも悔しいのか、切ないのか、啜り泣きつづけ、せかされ、とうとうリィウスは屈辱の言葉を唇からこぼす。
 して……。止めないで……。
 かすれた声でねだられ、ディオメデスは全身が燃えたのを自覚した。
「ああ! ああああっ! ああっ……、だ、駄目ぇ! も、もう嫌、いやだ!」
「うるさい、黙っていろ!」
 火がついたのはディオメデスも同じで、手の動きを強く早くする。
「ひぃっ!」
 リィウスの身体が魚のように跳ねる。それを背後からおさえつけるアウルスの目もいつになく熱っぽい。
「は……あぁ……ああああ!」
 最初の陥落に、リィウスは呆然となり、全身を辛くも甘い余韻にひたらせて、おびえた小動物のようにちぢこませている。
「……よしよし」
 そんなリィウスを、背後から拘束していたアウルスが、子どもを慰めるように腕や腹、胸をやんわり撫でているのがディオメデスには気に入らなかった。
「ん……んん」
 自我を喪失したように、目をつむって眠っているかのようなリィウスを抱くアウルスの腕は、いつになくやさしげで、リィウスは無意識なのだろう、芯をうしなってしまった身体を、まるでアウルスにゆだねるように預けている。はなはだディオメデスには気に入らない光景だった。
 そばのメロペの方は、欲望にぎらつく目でリィウスの、弾けたばかりの下肢の中心を食い入るように凝視している。
「次は俺にさせてくれよ」
 餌を求める犬のようなメロペの喘ぎを、ディオメデスはにべもなくはねつけた。
「まだ駄目だ。まだ終わってない。ほら、」
 最後の声は、忘我の境地にいるリィウスに向けられたものだった。
「ふぅ……」
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