燃ゆるローマ  ――夜光花――

文月 沙織

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「あっ! はなせ!」
 新手の暴行者にリィウスが抗議の声を高くしたが、そんなものが通じる男たちではない。
「いや! いやだ! 卑怯者!」
「騒ぐなよ。外の女たちが驚いて見に来るかもしれないぞ。ほら、もっと脚を広げろ」
「い、いやだ! ああ! 触るな!」
「聞き分けのない奴だなぁ」
 ディオメデスの呆れた声に、メロペが助成を申し出る。
「俺が手伝ってやる」
「あああっ!」
 無残に、リィウスは床の上でアウルスによって上半身をいましめられ、メロペによって右脚をあられもなく広げられる。
 誰にも見られたくないリィウスの肉体の秘部はディオメデスの目にほぼ明らかになる。だが、最後に闇という名のヴェールがリィウスに加担し、羞恥に気が狂うのを防いでいる。今夜はディオメデスも、加減して最後のヴェールまで剥ぐのは許してやった。
「ああ……可愛いな。まだどこか子どもっぽいが、ちゃんと男じゃないか」
 これはもう自分のものだ、という意思表示を込めて、いきなりそこを掴んでやると、リィウスは絶叫した。
「いやだ!」
 白い、陸に引きずりあげられた人魚のような裸体が揺れて、男たちの目を楽しませる。
「じっとしていろ」
 告げる、というより命じるように言うと、ディオメデスは、さらによく検分するように、調べるように、その細身のリィウスの男の象徴を、今度はやんわりと掴み、反応を待った。
「うう……」
 リィウスの美しい顔が屈辱と恥辱にゆがみ、尚いっそう美しくなる。
 幸か不幸か、リィウスという人間は、苦しめば苦しむほど美しく見えるようだ。稀に、そんな女や男もいるものなのだとディオメデスは妙に冷静に思っていた。
「うっ……! ううう……!」
 リィウスの額に小粒の真珠のような汗が浮かぶのが、うつろう光のもとに見える。
 指で扱いてやると、リィウスが、いやいや、と処女のように切なげに首を振る。
 そのうなじから匂うような色香がたちのぼり、これがまた男たちの狩猟本能を刺激する。隣のメロペが生唾を飲む音が聞こえそうだ。
 高潔で晩熟おくてなリィウスであっても、白蝋のような肉体の内には、やはり熱い血を秘めていたようで、ディオメデスのくわえる刺激には耐えられないようだ。
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