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三
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「ほう? 名はなんていうんだい、お嬢ちゃん?」
「コリンナ……です」
「おお、これは可愛いな」
メロペは幼い娘も好む。
タルペイアは、今宵はメロペにコリンナを売りこむ気でいた。初物好みのメロペは、こういうときにだけはかなり金をはずんでくれるのだ。もっともそれは最初の一回だけで、次からはかなり渋るのだが。
(売れるときにできるだけ高く売っておかないとね)
タルペイアはふくみ笑いを浮かべて、さらに囁く。
「いかがです、この子は?」
「うう……」
メロペは濁った酔眼を幼いコリンナのかぼそい手や、薄い胸に向ける。
たいていの男性ならまだそれほど欲望を覚える対象にはならない身体つきだろうが、ある種の男にはかなりそそるものがあるのだ。
「齢はいくつだ?」
「十三ですのよ。初々しいでしょう?」
「ほう……」
メロペが酔ってはいても、やや驚いたように目を見開く。
この時代、十三歳といえば、縁談の一つや二つあっておかしくない年齢でもある。
「すこし発育不全なのではないか? 胸なんぞまだ子どもようではないか?」
「ほほほほ。でも、それが好きだという殿方もいますのよ。……わかりますでしょう?」
「うう……。まぁな」
考えこむような顔になった。
「よーし、では俺が買ってやる。いくらだ?」
「七千デナリウスでいかが?」
「ぶっ!」
メロペは口にふくんでいた葡萄酒を吹きだした。ややわざとらしく。
「ふざけるなよ、それは王女の値段だぞ。まえに異国の貴族の奴隷娼婦を買ったことがあったが、せいぜい五千デナリウスだったぞ」
「あら? この子は貴族の娘なんですよ。まして初物なんですから、それぐらいいただいても罰は当たらないはずですわ」
しらっと、タルペイアは言う。
「それにしても高すぎる! まけろ」
酒で赤黒く燃える顔をゆがめて、メロペががなりたてる。
なんとなく面倒くさい想いでディオメデスは二人のやりとりを眺めていた。
「コリンナ……です」
「おお、これは可愛いな」
メロペは幼い娘も好む。
タルペイアは、今宵はメロペにコリンナを売りこむ気でいた。初物好みのメロペは、こういうときにだけはかなり金をはずんでくれるのだ。もっともそれは最初の一回だけで、次からはかなり渋るのだが。
(売れるときにできるだけ高く売っておかないとね)
タルペイアはふくみ笑いを浮かべて、さらに囁く。
「いかがです、この子は?」
「うう……」
メロペは濁った酔眼を幼いコリンナのかぼそい手や、薄い胸に向ける。
たいていの男性ならまだそれほど欲望を覚える対象にはならない身体つきだろうが、ある種の男にはかなりそそるものがあるのだ。
「齢はいくつだ?」
「十三ですのよ。初々しいでしょう?」
「ほう……」
メロペが酔ってはいても、やや驚いたように目を見開く。
この時代、十三歳といえば、縁談の一つや二つあっておかしくない年齢でもある。
「すこし発育不全なのではないか? 胸なんぞまだ子どもようではないか?」
「ほほほほ。でも、それが好きだという殿方もいますのよ。……わかりますでしょう?」
「うう……。まぁな」
考えこむような顔になった。
「よーし、では俺が買ってやる。いくらだ?」
「七千デナリウスでいかが?」
「ぶっ!」
メロペは口にふくんでいた葡萄酒を吹きだした。ややわざとらしく。
「ふざけるなよ、それは王女の値段だぞ。まえに異国の貴族の奴隷娼婦を買ったことがあったが、せいぜい五千デナリウスだったぞ」
「あら? この子は貴族の娘なんですよ。まして初物なんですから、それぐらいいただいても罰は当たらないはずですわ」
しらっと、タルペイアは言う。
「それにしても高すぎる! まけろ」
酒で赤黒く燃える顔をゆがめて、メロペががなりたてる。
なんとなく面倒くさい想いでディオメデスは二人のやりとりを眺めていた。
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