30 / 360
二
しおりを挟む
「兄さんはどのみち娼婦に……、男娼に堕ちるしかないんだ。当然だよ。プリスクス家の借金なんだもの。当主の兄さんになんとかしてもらわないとね」
青銅の杯に、アンキセウスに葡萄酒を注がせ、ナルキッソスは高慢そうに鼻をそらす。驕慢な美少女そのものの態度に、アンキセウスは再度、感心して舌をまく。
「今頃、兄さん、どうしているかな? あの女主……タルペイアの調教を受けているんだろうね。あの女、その道にかけては凄腕だって聞いたよ。……今頃、どんな顔しているんだろう? くっ、くっ、くっ」
アンキセウスは何も言わなかった。
だが、頭はついナルキッソスに挑発されるように動き、リィウスの姿を思い浮かべてしまう。今頃、リィウスは……男娼となるべく女主の教育を受けているのだ。あの誇りたかい、気品のある顔がどんなふうに歪むのか、想像してアンキセウスは頬が熱くなりだしたのを感じた。
いや、熱くなってきたのは、顔だけではない。
「ふふふふふ」
ナルキッソスが邪悪に碧眼をきらめかせ、細い腕でアンキセウスを手招きする。
「こっちへ来いよ」
アンキセウスは言われるままにナルキッソスに近づくと、彼のまえに跪いた。どのみち、リィウスがいない今では、彼がプリスクス家の当主代理となるのだ。アンキセウスに断る権利はない。
「脱がせろよ」
伸びてきたナルキッソスの白い足。その足首から、ていねいに皮の紐をほどき、沓をはずす。アンキセウスは、あえてゆっくりと、焦らすように時間をかけて紐をほどいた。
「舐めろよ」
言われるがままに、手入れのゆきとどいたナルキッソスの足の指に舌を這わせる。こういう細かいところまで日頃から気を使って清潔にしているところにも、ナルキッソスの普通ではない嗜癖や性癖がにじみ出ている。
(そのことに長いこと気づかなかったリィウス様、あなたも悪いのですよ)
アンキセウスの脳裏に、リィウスの神経質そうな顔が浮かぶ。気品にあふれた物腰、ほっそりと女のように華奢な肩、それでいてけっして惰弱にはならず、たしかな気骨を内に秘めているのがしのばれた若き肉体。
青銅の杯に、アンキセウスに葡萄酒を注がせ、ナルキッソスは高慢そうに鼻をそらす。驕慢な美少女そのものの態度に、アンキセウスは再度、感心して舌をまく。
「今頃、兄さん、どうしているかな? あの女主……タルペイアの調教を受けているんだろうね。あの女、その道にかけては凄腕だって聞いたよ。……今頃、どんな顔しているんだろう? くっ、くっ、くっ」
アンキセウスは何も言わなかった。
だが、頭はついナルキッソスに挑発されるように動き、リィウスの姿を思い浮かべてしまう。今頃、リィウスは……男娼となるべく女主の教育を受けているのだ。あの誇りたかい、気品のある顔がどんなふうに歪むのか、想像してアンキセウスは頬が熱くなりだしたのを感じた。
いや、熱くなってきたのは、顔だけではない。
「ふふふふふ」
ナルキッソスが邪悪に碧眼をきらめかせ、細い腕でアンキセウスを手招きする。
「こっちへ来いよ」
アンキセウスは言われるままにナルキッソスに近づくと、彼のまえに跪いた。どのみち、リィウスがいない今では、彼がプリスクス家の当主代理となるのだ。アンキセウスに断る権利はない。
「脱がせろよ」
伸びてきたナルキッソスの白い足。その足首から、ていねいに皮の紐をほどき、沓をはずす。アンキセウスは、あえてゆっくりと、焦らすように時間をかけて紐をほどいた。
「舐めろよ」
言われるがままに、手入れのゆきとどいたナルキッソスの足の指に舌を這わせる。こういう細かいところまで日頃から気を使って清潔にしているところにも、ナルキッソスの普通ではない嗜癖や性癖がにじみ出ている。
(そのことに長いこと気づかなかったリィウス様、あなたも悪いのですよ)
アンキセウスの脳裏に、リィウスの神経質そうな顔が浮かぶ。気品にあふれた物腰、ほっそりと女のように華奢な肩、それでいてけっして惰弱にはならず、たしかな気骨を内に秘めているのがしのばれた若き肉体。
10
お気に入りに追加
162
あなたにおすすめの小説



どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。


こども病院の日常
moa
キャラ文芸
ここの病院は、こども病院です。
18歳以下の子供が通う病院、
診療科はたくさんあります。
内科、外科、耳鼻科、歯科、皮膚科etc…
ただただ医者目線で色々な病気を治療していくだけの小説です。
恋愛要素などは一切ありません。
密着病院24時!的な感じです。
人物像などは表記していない為、読者様のご想像にお任せします。
※泣く表現、痛い表現など嫌いな方は読むのをお控えください。
歯科以外の医療知識はそこまで詳しくないのですみませんがご了承ください。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる