黄金郷の夢

文月 沙織

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グラリオンの黄昏 一

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「あうっ……、あああっ!」
 終わることのない淫獄はどこまでつづくのか。
 木馬の上で屈辱の三度目の解放を果たしたアベルだが、それで許されたわけではなかった。
 朦朧としたまま、木馬から下ろされ、今は寝台の褥でその身を震わせている。
「あっ、ああ、ああ!」
 白い背をうつぶせに伸ばして、猫のように身体を反らすが、腰はしっかりとディオ王によって捕らえられ、逃れようもないまま、奥所に王のあらんかぎりの情熱を受け入れていた。
 今は一応、白絹の薄網が褥をかこみ、客たちの視線を遮っているのが唯一の救いだ。
 下衣を脱いだ王の玉体を人目に晒さないためだが、さすがに、これ以上アベルの精神を傷つけることをはばかってのこともある。王や宦官たちは、限界を見越して、アベルが完全に自意識を失くさない一線を守っているのだ。
 だが、それは発狂や自害という逃げ道ですら許さないということだった。
「アベル、そなたは永遠に余のものじゃ」
 王が想いを口にする。今は彼もまた全裸だった。
「ふ、ううん!」
 王の膝に背後から抱きかかえられ、アベルは下肢を大きく広げられた。
「はっ、ああ、ん。あ、い、いや」
 矜持きょうじも自尊心もうばわれたアベルは、羞恥という最後の衣も完全に剥ぎとられて、不様な自分の姿をかえりみる余裕もない。
 足はいっそう大きく広げられ、息づく股間の若茎は自由におのれを表現している。
「あっ、あん……!」
 自分の口から、巷の娼婦のような言葉が漏れるのを、アベルは霞につつまれたような心持ちで聞いていた。
「こら、また遂ったのか? 夫より先に楽しむとは、困った妻じゃ」
「はあ!」
 王の指が先端を弾き、アベルの身体を一瞬すくませる。
 だが、次には、さらに与えられた刺激によって、アベルの中心はますます勢いづく。
(あ、もう、駄目だ……)
 もう駄目。
 そう。もう、すべてが駄目だった。
 もはや死のうという最後の気骨もくだかれ、憎い男の思うままにされてしまっている。
 アベルは完璧な闇に落ちていく自分を悟った。
(もう……逃げれない……。ああ、もう終わった)
 すべては終わった。
 もはや騎士にも貴族にももどれない。アベル=アルベニス伯爵はこの日死んだのだ。消えてこの世からなくなった。
 今いるのはアルベニス伯爵の成れの果てである惨めな性奴隷だ。
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