132 / 150
最後の一日 八
しおりを挟む
「あああ……」
アベルはもはや人ではなくなっていた。
「はぁ! ああっ! あああっ! いや、いやぁ!」
美しい一匹の性獣と化して、男たちの望みどおり、淫らな姿をさらしつづける。
広間にいた全員の目が、アベルに釘付けになり、誰ひとり出て行く者も目を伏せる者もいない。
いっそ気を失えればまだ楽だったろうが、それもかなわず、アベルは全身をのけぞらせて息をつめた。
おのれの放ったもので、天鵞絨も、太腿も濡れているのを感じる。
気の触れそうな屈辱のなか、天井が崩れ落ちる錯覚を覚えていた。そのせいだろう。頭上で人々の顔がまわる。
ディオ王、エゴイ、カイ、アーミナ、エリス、アイーシャもいれば、カッサンドラもいる。
宦官長ハラム、アビラ子爵、グラリオンの延伸たち、顔、顔、顔……。
そして……、貪婪な熱をふくんだ目で自分を見ている観客たちのなかに、最後にアベルはひとつの顔を見た。
フードを深くかぶっている……男。
顔が見えそうで見えない。相手もアベルのぼんやりとした視線が自分に向かっていることに気づいたのだろう。
一瞬、息を飲むような仕草をしてから、まるで覚悟を決めたかのように、纏っている黒布をすべらせた。
まさか……とアベルは虚ろな意識のなかで思っていた。
その男と目が合った瞬間、アベルは文字どおり目の前が真っ暗になった。
アベルはもはや人ではなくなっていた。
「はぁ! ああっ! あああっ! いや、いやぁ!」
美しい一匹の性獣と化して、男たちの望みどおり、淫らな姿をさらしつづける。
広間にいた全員の目が、アベルに釘付けになり、誰ひとり出て行く者も目を伏せる者もいない。
いっそ気を失えればまだ楽だったろうが、それもかなわず、アベルは全身をのけぞらせて息をつめた。
おのれの放ったもので、天鵞絨も、太腿も濡れているのを感じる。
気の触れそうな屈辱のなか、天井が崩れ落ちる錯覚を覚えていた。そのせいだろう。頭上で人々の顔がまわる。
ディオ王、エゴイ、カイ、アーミナ、エリス、アイーシャもいれば、カッサンドラもいる。
宦官長ハラム、アビラ子爵、グラリオンの延伸たち、顔、顔、顔……。
そして……、貪婪な熱をふくんだ目で自分を見ている観客たちのなかに、最後にアベルはひとつの顔を見た。
フードを深くかぶっている……男。
顔が見えそうで見えない。相手もアベルのぼんやりとした視線が自分に向かっていることに気づいたのだろう。
一瞬、息を飲むような仕草をしてから、まるで覚悟を決めたかのように、纏っている黒布をすべらせた。
まさか……とアベルは虚ろな意識のなかで思っていた。
その男と目が合った瞬間、アベルは文字どおり目の前が真っ暗になった。
0
お気に入りに追加
408
あなたにおすすめの小説




イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。



ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる