125 / 150
最後の一日 一
しおりを挟む
「アルベニス伯爵……、いや、アベル、そなたはもう帝国には決して帰さぬ。よいか、終生、余の妻として余のそばにだけおれ」
「ううううう……。 あっ!」
聞き分けない子どものように返事をしないアベルに、王は荒療治とばかり、褥上に立ちあがると、アベルを引きずるようにして同じように立たせる。
「はぅ!」
いったんは離れてくれた熱を、ふたたび背後に押しつけられてアベルは抗ったが、すぐに抑えこまれ、王の意のままだ。
「ああっ! や、やめろ、やめてくれ……、いやだ、もう、やめて、やめて!」
立ったままの交情はさらに苦痛だった。
客たちのまえにいっそう恥辱の姿を晒し、無理やりあたえられる快楽に靡くおのれの浅ましさを隠すところなく見られてしまう悔しさにアベルは歯噛みした。
しかも、自分はこれだけ生き恥をかかされているというのに、王は衣をまとったままで、ほとんど乱れていないのがまた悔しかった。
「はぁ……! あああっ!」
「くくく。淫らな花嫁じゃ」
恥辱と屈辱、羞恥、絶望、それらに頭も心も破壊されつくされたあと、アベルのなかで、なにかが壊れる音がした。
後になって思い出すと、アベル自身、なぜそんなことをしてしまったか解らないが、気づいたとき、アベルはみずから身体をひねると、ディオ王の唇におのれの口を寄せていた。
「……?」
王がちいさく息を飲むのが知れる。
だが、かまわずアベルが身体を動かしたので、二人の唇がかさなる。
「伯爵……?」
「……アベルと呼んで」
自分の発した声が別人のもののように聞こえる。近くにいたエゴイの息を飲む音も聞こえる。
「アベル」
王はたしかにそう呼んだ。
そして、次の瞬間、衣擦れの音が響き、ディオ王の纏っていた白い豪華な衣が落とされた。王もまた上半身裸になると、褥の上にアベルを組みしいた。
「初心だった花嫁がやっとその気になってくれたようじゃ」
これは、復讐だ。アベルは抱かれながら、ぎりぎり正気を保っている頭のどこかでそう考えていた。
(私だけでは墜ちない……)
目のまえのこの男も、また道連れにしてやる。そんな復仇の想いが胸に燃える。
それは、とことん虐げられ、墜とされた者がなしうることのできる、唯一の復讐だったのかもしれない。
ディオ王に力強く抱きしめられながら、アベルは象牙の耳飾りにどうにか手を伸ばした。震える片手でなんとか栓を開けると、口に含んだ。
「ううううう……。 あっ!」
聞き分けない子どものように返事をしないアベルに、王は荒療治とばかり、褥上に立ちあがると、アベルを引きずるようにして同じように立たせる。
「はぅ!」
いったんは離れてくれた熱を、ふたたび背後に押しつけられてアベルは抗ったが、すぐに抑えこまれ、王の意のままだ。
「ああっ! や、やめろ、やめてくれ……、いやだ、もう、やめて、やめて!」
立ったままの交情はさらに苦痛だった。
客たちのまえにいっそう恥辱の姿を晒し、無理やりあたえられる快楽に靡くおのれの浅ましさを隠すところなく見られてしまう悔しさにアベルは歯噛みした。
しかも、自分はこれだけ生き恥をかかされているというのに、王は衣をまとったままで、ほとんど乱れていないのがまた悔しかった。
「はぁ……! あああっ!」
「くくく。淫らな花嫁じゃ」
恥辱と屈辱、羞恥、絶望、それらに頭も心も破壊されつくされたあと、アベルのなかで、なにかが壊れる音がした。
後になって思い出すと、アベル自身、なぜそんなことをしてしまったか解らないが、気づいたとき、アベルはみずから身体をひねると、ディオ王の唇におのれの口を寄せていた。
「……?」
王がちいさく息を飲むのが知れる。
だが、かまわずアベルが身体を動かしたので、二人の唇がかさなる。
「伯爵……?」
「……アベルと呼んで」
自分の発した声が別人のもののように聞こえる。近くにいたエゴイの息を飲む音も聞こえる。
「アベル」
王はたしかにそう呼んだ。
そして、次の瞬間、衣擦れの音が響き、ディオ王の纏っていた白い豪華な衣が落とされた。王もまた上半身裸になると、褥の上にアベルを組みしいた。
「初心だった花嫁がやっとその気になってくれたようじゃ」
これは、復讐だ。アベルは抱かれながら、ぎりぎり正気を保っている頭のどこかでそう考えていた。
(私だけでは墜ちない……)
目のまえのこの男も、また道連れにしてやる。そんな復仇の想いが胸に燃える。
それは、とことん虐げられ、墜とされた者がなしうることのできる、唯一の復讐だったのかもしれない。
ディオ王に力強く抱きしめられながら、アベルは象牙の耳飾りにどうにか手を伸ばした。震える片手でなんとか栓を開けると、口に含んだ。
2
お気に入りに追加
408
あなたにおすすめの小説




イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。



ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる