黄金郷の夢

文月 沙織

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初夜散華 五

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「故国にいたときよりも、さらに麗しくなったはずじゃ。そうは思わぬか」
「……御意」
 声はかすかに固くなったが、すぐにエゴイは言葉をつらねた。
「故国では男らしく凛々しかったアルベニス伯爵が、グラリオンではこんなにも可憐な姿を見せるのか、と驚いております。さぞ、お国の方のご指導が良かったのでしょうな」
「おお。思ったより時間がかかったがな。……尻を上げさせるとよい」
「あ、いやだ……!」
 アベルは朦朧としつつも、聞きとったその言葉に、残された力のすべてで逆らったが、所詮、自分よりも体格の良い男二人に勝てるわけもなく、屈辱の体勢を取らされてしまう。
「どうじゃ、見ろ、この白い尻を……。ここで、な」
「ひぃっ!」
 蕾に衝撃を受けてアベルは声をあげた。慎ましいそこは、先ほど散々道具で乱されたものの、すこしするとまた貞淑につぼまる。それへ、王の指が一本いきなり準備なく侵入してきたのだ。
「楽しめるよう充分仕込んだぞ」
 あ、ああ……。かぼそい悲鳴は権力者二人に無視された。
 王の言うとおり、無理に呑まされた指であっても、すぐに慣れて、蕾の方から求めだす。
 苦悶とは別の汗を背に浮かべたアベルを見下ろす男たちのほくそ笑みは見えずとも、揶揄をふくんだ声はしっかりと聞こえてくる。
「さぞ、根気が言ったことでしょうな。伯爵は生真面目で女と浮き名を流したこともない人ですからな」
「はぁ……!」
 蕾をいじる王に加勢するように、エゴイは尻たぶを揉みはじめた。
「まあな。だが、素質はあったようじゃ。連珠に、張り型、卵で励んでおるときの伯爵のいじらしい姿といったら。見せてやりたいぐらいじゃ」
 いっそ気を失えれば良かったかもしれないが、執拗に王とエゴイに尻を刺激されている状況では、それもならず、アベルは視界が真っ赤になるほどの恥辱のなかで、男たちにもてあそばれつづけるしかなかった。
「じゃが、なんといっても、一番すさまじかったのは木馬乗りじゃ」
 王の声はうっとりとしたものになっている。
「木馬……?」
「くくくくく。素晴らしかったぞ。悔し泣きしながらも、こらえきれずに遂くときの伯爵の可愛らしさといったら……あれ以来、余は後宮のどんな女にも小姓にも興味がなくなった」
「ほう……。それは、眼福でしょうな。……私も一度見てみたいものです」
 エゴイの苦笑まじりの呟きは、アベルをたたきのめした。
「後で見せてやろう」
「楽しみです」
 血のかよわぬ男二人の会話に、アベルは自分が人ではなくなっていく気がした。
「じゃが、けしからんのは、遂くときに、下僕の名を呼んだことじゃ。あれはゆるせぬ」
 怒りつつも、王の言葉には嘲笑がこめられている。エゴイの返事にもふざけた響きがあった。
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