黄金郷の夢

文月 沙織

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初夜散華 四

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 それだけで全てが伝わったように、エゴイはふたたびアベルに近寄ると、アベルの両腕を後ろ手にして、身体をとらえた。
「な、なにをする!」
 彼は逆上するアベルをものともせず、まとめた腕を引き、王のまえに胸部を見せつける形に身体を反らせてしまった。
 エゴイの動きには迷いもためらいもなく、敵国の王者の意向をくんで、親友のアベルを堕とすのに協力しているのだ。
 アベルは友が信じられなくなり、苦しい体勢で恨みがましい目を向けていた。
「な、なぜ……」
「しっ! 今は耐えろ……」
「もう……無理だ」
 閉じた瞼からまた涙があふれそうだ。
「おまえは騎士だろう、アベル」
 首を振ることもできず、かといって頷くこともできず、アベルはそのまま胸を王に突き出すかたちで褥に座りこまされた。
「おお、綺麗に赤く色づいて。まるで、誘っているようじゃな。はしたない奴め」
「あっ……!」
 右胸の突起を、王の親指と人さし指で摘まれ、アベルはちいさな悲鳴をあげた。
 左胸にもおなじようにされて、首を振った。
 指だけならまだ良かった。目を閉じた瞬間、温かく濡れたものを感じて、背がこわばる。
「あっ……、ひぃっ」
 王はおのれの延臣たちの前で悪びれもせず、平然と男の乳首を舐めているのだ。
 舌で舐め、唇でついばみ、ときに歯を軽く当てたりする。その間も手で、アベルのあるはずもない乳房をつまみ、揉みつづけている。
「や、やめろ、よせ、もう、よせ!」
 嫌がってのけぞっても、背後では旧友がしっかりと肩と手をおさえこみ、逃がしてはくれない。
「いやだ、こんなのは嫌だ!」
 拒絶の叫びは誰の耳にも聞かれることはなく、むなしく広間の天井に消えていくだけだ。
 執拗な責めに、アベルの胸は唾液で濡れ、白い肌はほんのり色づいていく。
 どれぐらい時間がたったか。アベルは意識が朦朧としてきて、歯止めがきかなくなったように泣きじゃくっていた。
「うっ、えっぐ……、い、いやだ、もう、やめろぉ……。えっぐ」
 恥も外聞も誇りも、意識から飛び去ってしまっていた。
「おお、可愛いな。やっと素直になってきたようじゃな」
「い、いや、も、もう、いやだ」
 アベルは幼児のように首を振りつづけた。
「くっ、くっ、くっ、嫌なわけがあるか。ここは、素直に感じておるではないか」
「はぁ!」
 若茎の先端をはじかれ、身体がふるえる。
「良い子じゃ。可愛い……。どうじゃ、公爵、余の新妻は可愛いであろう?」
「全くです、陛下」
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