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初夜散華 三
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またも、観客たちの息を飲む音がさざ波となって広間に満ちる。
アベルはほぼ全裸で寝台の上で立たされる羽目になった。
顔をおおうヴェールと足元にからまるように残っている白布以外、身をおおうものは何もない。どこか異様な姿だが、その中途半端さが、壮絶な色香を放っている。
いっそ、顔や足をおおう布がない方がまだましかもしれない。
なにも纏うものがなければ、生まれたままの姿のひとつの生き物に戻れたかもしれないが、顔をおおう薄布と足にからまる布は、それすら許してくれず、アベルの意識を引き締めつづけ、人という生き物であることを忘れさせてはくれず、いさぎよく自棄になることすらさせてはくれない。
「手は下ろせ。足をもっと開くと良い。客たちにそなたの美しい身体をはっきりと見せてやるがよい」
征服者の残忍さと傲慢さで告げてくる苛烈な王の命令に、アベルは、ここで抗えばさらに屈辱だと思い、死んだつもりで従ったものの、こうして立たされてあられもない姿を強制されると、切ないほどの羞恥の痛みが胸に突き上げ、頬が燃える。
そんな、つい先ほどまで、あれほど淫蕩な痴態を晒しながらも、今は少女のように初々しく羞渋し、ふるえて立つアベルの様子は、いまだ汚れを知らぬ清純な乙女のようで、淫楽にひたるグラリオンの民には新鮮なのか、ざわめきは大きくなる。
実際、男らしく鍛えられていた身体は、芯の強さを感じさせつつも、調教によって快美感を得てしまったせいか、なめらかな色っぽい張りを持ち、なまめかしく乳白色に輝いて、男も女も魅了する特殊な色気を備えはじめていた。
さらに下肢に生える黄金の若草はこの国の人の目に強烈だった。恥じ入るようにうなだれる若茎、まだまだ未熟な双果は鴇色めいて初心そうである。少年期は終わったものの、まだ青年期の入り口でとまどいの季節を過ごしている者だけが持ちうる瑞々しさと、眩しいほどの青春の美しさに満ちあふれた肉体に、人々の生唾を飲む音が聞こえてきそうだ。
しかも、この絶世の美青年は、完璧な男性の身体を持ちながらも、今、女となるべく受け身の快楽をたたきこまれているせいか、異常なほどに強烈な色気を発しはじめているのだ。それは、中性、というよりも両性の、硬軟両質の美点をそなえた世にも稀な肉体美で、いにしえの物語に出てくる両性具有者めいた妖美さを放ちはじめていた。
客たちは、素晴らしい芸術品を鑑賞しているような、神話物語の芝居の世界に引きずりこまれたような心もちにさせられた。
「絵にしておきたいほどだ」 誰かの呟きに、周囲の者がうなずく気配が知れわたる。
アベルの美しさを再認識して、ディオ王は満足の笑みを浮かべた。
「見ろ、これが余の花嫁じゃ」
溜息と、喝采と、拍手。
アベルは全身から火が吹きそうだが、そんな羞恥にいたたまれなさそうな麗人のたたずまいは、いっそう見る者の胸をかきたて、引っかきまわし、興奮させる。
「さて、蕾はほどよくほころばせたのじゃから、今度は、こちらを可愛がってやろう」
「よせ!」
咄嗟に、アベルは胸に伸びてきた王の手をはたいていた。
人々の失笑に、王は眉を寄せる。
「まったくとんでもないじゃじゃ馬じゃ。まだ躾けが足りなかったとみえるな。これは、同国人に責任をとってもらうとするか。公爵、今一度、手伝ってもらおうか」
アベルはほぼ全裸で寝台の上で立たされる羽目になった。
顔をおおうヴェールと足元にからまるように残っている白布以外、身をおおうものは何もない。どこか異様な姿だが、その中途半端さが、壮絶な色香を放っている。
いっそ、顔や足をおおう布がない方がまだましかもしれない。
なにも纏うものがなければ、生まれたままの姿のひとつの生き物に戻れたかもしれないが、顔をおおう薄布と足にからまる布は、それすら許してくれず、アベルの意識を引き締めつづけ、人という生き物であることを忘れさせてはくれず、いさぎよく自棄になることすらさせてはくれない。
「手は下ろせ。足をもっと開くと良い。客たちにそなたの美しい身体をはっきりと見せてやるがよい」
征服者の残忍さと傲慢さで告げてくる苛烈な王の命令に、アベルは、ここで抗えばさらに屈辱だと思い、死んだつもりで従ったものの、こうして立たされてあられもない姿を強制されると、切ないほどの羞恥の痛みが胸に突き上げ、頬が燃える。
そんな、つい先ほどまで、あれほど淫蕩な痴態を晒しながらも、今は少女のように初々しく羞渋し、ふるえて立つアベルの様子は、いまだ汚れを知らぬ清純な乙女のようで、淫楽にひたるグラリオンの民には新鮮なのか、ざわめきは大きくなる。
実際、男らしく鍛えられていた身体は、芯の強さを感じさせつつも、調教によって快美感を得てしまったせいか、なめらかな色っぽい張りを持ち、なまめかしく乳白色に輝いて、男も女も魅了する特殊な色気を備えはじめていた。
さらに下肢に生える黄金の若草はこの国の人の目に強烈だった。恥じ入るようにうなだれる若茎、まだまだ未熟な双果は鴇色めいて初心そうである。少年期は終わったものの、まだ青年期の入り口でとまどいの季節を過ごしている者だけが持ちうる瑞々しさと、眩しいほどの青春の美しさに満ちあふれた肉体に、人々の生唾を飲む音が聞こえてきそうだ。
しかも、この絶世の美青年は、完璧な男性の身体を持ちながらも、今、女となるべく受け身の快楽をたたきこまれているせいか、異常なほどに強烈な色気を発しはじめているのだ。それは、中性、というよりも両性の、硬軟両質の美点をそなえた世にも稀な肉体美で、いにしえの物語に出てくる両性具有者めいた妖美さを放ちはじめていた。
客たちは、素晴らしい芸術品を鑑賞しているような、神話物語の芝居の世界に引きずりこまれたような心もちにさせられた。
「絵にしておきたいほどだ」 誰かの呟きに、周囲の者がうなずく気配が知れわたる。
アベルの美しさを再認識して、ディオ王は満足の笑みを浮かべた。
「見ろ、これが余の花嫁じゃ」
溜息と、喝采と、拍手。
アベルは全身から火が吹きそうだが、そんな羞恥にいたたまれなさそうな麗人のたたずまいは、いっそう見る者の胸をかきたて、引っかきまわし、興奮させる。
「さて、蕾はほどよくほころばせたのじゃから、今度は、こちらを可愛がってやろう」
「よせ!」
咄嗟に、アベルは胸に伸びてきた王の手をはたいていた。
人々の失笑に、王は眉を寄せる。
「まったくとんでもないじゃじゃ馬じゃ。まだ躾けが足りなかったとみえるな。これは、同国人に責任をとってもらうとするか。公爵、今一度、手伝ってもらおうか」
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