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花開くとき 三
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だからといって、アベルのために何ができるわけでもない。する気もない。してはいけない。調教相手と必要以上に親密になってしまったり、調教相手になんらかの便宜をはかることは、菫の掟に反する。
掟に反した菫は、即座に役職を罷免され、最下級の奴隷に堕とされてしまう。今まで顎でこき使っていた下っ端の召使たちに、こんどは自分が顎でこき使われる身になるのだから、それはそれは惨めなものだ。それを厭うて、禁を犯した菫のなかには、自害した者もいるほどだ。
菫たちにかぎらず、後宮の人事は変遷がきびしい。今日は栄誉を受け、ときめいていたものが、些細なことで王族の勘気をうけて、翌日には最下級の奴隷の雑居部屋に押しこめられることもざらにある。
今までのエリスの宦官としての人生は、まず恵まれているといえるだろう。最初に師となった宦官は温厚な人物で、宮殿の薬剤師をつとめていた。薬剤師は医師についで、宮殿や後宮では尊敬される立場だ。エリスは彼の下で薬草についていろいろ学び、容姿と人好きのする性格を先代の菫に認められて、抜擢された。現在の菫の筆頭であるカイは悪い人ではないし、アーミナは性格はきついが、エリスがあまり彼に逆らわないように気をつけてきたので、けっこううまくやっている。
(それに、あいつには貸しがあるしね……)
丁寧に黒檀の道具を布で拭きながら、そんなことを考えていると、奇妙な心持ちになってきた。
夕日が、ぼんやりと漆黒の物体を照らす。
(これが……伯爵のなかに入ったんだ……。これを呑み込んで、伯爵はなんども……)
そんなあられもないことを想像してしまうと、夕日が当たらなくともエリスの頬は赤く熱くなる。
気づけば、いつの間にかアーミナも、離れた所にちらほら見えた他の宦官や下女もいない。皆、夕餉を取りに厨房へ向かったのだろう。
人気がいないことを確かめてから、エリスは、先ほどまでアーミナがいた鳳凰木の影に身をひそめると、おずおずと、舌で道具を舐めてみる。
口腔に唾液を溜め、それを道具になすりつける。洗ったばかりだが、また洗えばすむことだ。
適度に湿らせると、そっとみずからの裾をまくりあげ、火照っている箇所にあてがう。下帯は最初からつけていない。
「ん……、んん!」
かすかな肉の抵抗を感じつつも、痛みはなく、意を決して、そっと、そっと押し込んでいく。
「ああ……!」
掟に反した菫は、即座に役職を罷免され、最下級の奴隷に堕とされてしまう。今まで顎でこき使っていた下っ端の召使たちに、こんどは自分が顎でこき使われる身になるのだから、それはそれは惨めなものだ。それを厭うて、禁を犯した菫のなかには、自害した者もいるほどだ。
菫たちにかぎらず、後宮の人事は変遷がきびしい。今日は栄誉を受け、ときめいていたものが、些細なことで王族の勘気をうけて、翌日には最下級の奴隷の雑居部屋に押しこめられることもざらにある。
今までのエリスの宦官としての人生は、まず恵まれているといえるだろう。最初に師となった宦官は温厚な人物で、宮殿の薬剤師をつとめていた。薬剤師は医師についで、宮殿や後宮では尊敬される立場だ。エリスは彼の下で薬草についていろいろ学び、容姿と人好きのする性格を先代の菫に認められて、抜擢された。現在の菫の筆頭であるカイは悪い人ではないし、アーミナは性格はきついが、エリスがあまり彼に逆らわないように気をつけてきたので、けっこううまくやっている。
(それに、あいつには貸しがあるしね……)
丁寧に黒檀の道具を布で拭きながら、そんなことを考えていると、奇妙な心持ちになってきた。
夕日が、ぼんやりと漆黒の物体を照らす。
(これが……伯爵のなかに入ったんだ……。これを呑み込んで、伯爵はなんども……)
そんなあられもないことを想像してしまうと、夕日が当たらなくともエリスの頬は赤く熱くなる。
気づけば、いつの間にかアーミナも、離れた所にちらほら見えた他の宦官や下女もいない。皆、夕餉を取りに厨房へ向かったのだろう。
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口腔に唾液を溜め、それを道具になすりつける。洗ったばかりだが、また洗えばすむことだ。
適度に湿らせると、そっとみずからの裾をまくりあげ、火照っている箇所にあてがう。下帯は最初からつけていない。
「ん……、んん!」
かすかな肉の抵抗を感じつつも、痛みはなく、意を決して、そっと、そっと押し込んでいく。
「ああ……!」
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