黄金郷の夢

文月 沙織

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開花寸前 四

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 そんな自分をアイーシャやアーミナ、エリス、ほかの宦官たちが興味津々の目で見ていることも完全に忘れることができないのが、また辛い。目を閉じて闇のなかに閉じこもってはみても、視線の針は痛いほどにアベルの感受性を刺激する。
 異教徒の女と、閹人たちの視姦の輪にかこまれ、アベルの精神は限界まで追い詰められていた。
「くぅ……!」
「伯爵、無理をしないで。感じたのなら、思うままに表せばいい」
 そんなことが出来るわけがない。アベルは啜り泣きながら、ジャムズの誘惑に顔を振った。
 だが、どれほど嫌がってはみても、二十二の若さと健康な肉体と、生きている証しに流れる血潮ちしおを体内に持った身の悲しさで、生理的な反応を止めることは、もはやアベルにはできない。
 絶頂感が、迫りつつあった。
(ああ……! あっ! くる! ああ、いく! いってしまう!)

 アベルが我を忘れて、昇りつめようとした、まさにその瞬間、下肢にはげしい圧迫感がせまった。
(え……?)
「駄目よ、まだ遂かせないわ!」
 閉じていた目をあけると、そこに悪戯な幼女のような顔をした女悪魔がいた。
 細い手が、薄布をたくしあげ、しっかりとアベルの根本を握りしめているのだ。
「まだ、まだ」
「ううっ……」
 アベルは眉をゆがめた。 
 前方はアイーシャの手によって抑えこまれ、後方は黒檀の張り型によって押され、行き場をうしなった熱がアベルの体内をがす。
「はぁ……!」
 先ほどまでの拒絶や否定とはべつの意味にアベルは首を振っていた。
 体内で今も炎が燃えている。
 どうにかして欲しい、なんとかして欲しい。
 だが、どうにもならない。
「ふふふふふふ」
 そこを握りしめたまま、アイーシャはもう片方の手で、一瞬えたアベルの分身を励ます。今のアベルにとっては過酷な責めだった。
「や、やめ!」
 アベルは涙声の悲鳴をあげた。
「ふふふふふふ」
 額にかかった金髪が汗で張りつくのを感じる。顔のみならず、背も脚も汗まみれだ。身体から出ることを禁じられた熱のかたまりが全身を内側かららして、出口を求めてうごめいている。アベルは泣きじゃくらずにいられない。
「た、たのむ……! も、もう、無理だ」
 焦燥感ともどかしさに、気が狂いそうだった。
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