黄金郷の夢

文月 沙織

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開花寸前 三

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 いっそこの行為によって苦悶を感じられたならば、まだ救いがあったろう。
 しかし連日の調教によってすっかり慣らされた身体は、待ち望んでいたように、異物を呑みこむ。痛みもなく、やすやすと禁断の場所を蹂躙される悔しさに、アベルは歯を食いしばった。
(ああ……駄目だ! 駄目……)
 心の内で叫んではみても、体内をえぐる物体の存在はどんどん大きくなる。それによって生じる、説明できないもどかしさ、じれったさも強まっていく。
 アベルは身体のなかに得体の知れない不気味な生き物が巣食いだしたことを悟って、恐怖と絶望に悲鳴をあげそうになった。
 だが、ジャムズはそんなアベルの懊悩など関知せず、ひたすらアベルの身体を昂ぶらせることだけに熱中している。
「ほうら、どうです?」
「く、苦しい……、もうよせ!」
 ハルスがまたも鼻で笑う。
「ここ、感じていますよ、伯爵」
 きざしを示している若茎の先端をジャムズにつままれ、アベルは悲鳴をあげた。
「止め、もう止め!」
「何言っているんです。もう半分も呑みこんでいるではないですか? ここも……ほら、こんなに感じて。ほうら、もう少し」
「は、入ってくる! ああ、入ってくる!」
「大丈夫です。動かないで」
 ジャムズの声は真剣そのものだ。
「い、いやだ! よせ、固い……! ああっ、固い!」
 アベルは切羽詰まった声をあげた。
 堪えきれなかった涙が頬をつたう。
 敵の前で子どものように泣いている自分が信じられない。帝国の誇り高き騎士が、異教徒の責め苦に泣くとは。
 いや、苦痛だけならば死んでも絶えてみせれたはずだ。だが、体内を刺激され、無理やりにもたらされるこの異常な快楽とは戦おうにも戦うことが出来ないのだ。
「ああ! 止せ、もう止せぇ……!」
「大丈夫です。力を抜いて。口を開けて、息を大きく吐いて」
 聞き分けのない子どもを躾けるように、厳しさと甘さをふくんだ声で言いつけ、ジャムズは、またアベルの緊張をほぐすためにか胸に手を伸ばしてきた。
「ああ……!」
 今度は、ジャムズの手は、片胸全体をまさぐる。ハルスも負けじと、左側の胸をまさぐる。
 屈強な宦官二人に胸をまさぐられ、アベルは耐えきれず啜り泣いた。
 男性の象徴を失くした閹人えんじん二人によって、身の内にひそむ〝女〝を引きずりだされて、受け身の悦びを教え込まれている、この異様な体験。あまりの惨めさにアベルは泣きじゃくった。
「はぁ……! ああっ!」
 アベルは切なげに頭を振ることしかできない。
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