黄金郷の夢

文月 沙織

文字の大きさ
上 下
81 / 150

開花寸前 二

しおりを挟む
 ハルスが鼻で笑うのが知れたが、次に聞こえてきたジャムズの声は真剣だった。
「その調子です。身体がほぐれてきた。もう少しですよ」
「あふぅ……」
 全身を桃色の霞につつまれたような危うい陶酔感がアベルを襲う。
 今触れている二人の宦官のみならず、アイーシャたちや、ほかの宦官たちの視線が自分に集中していることは、かろうじて自覚しているのだが、心も肉体もジャムズの手管てくだによって、じんわりと蕩けていってしまうのを止められない。
(だ、駄目だ……こんな。ああ、こんな……!)
 またも、アベルのなかの獣が目を覚ましはじめた。
 またも、〟あれ〟が起こり始めたのだ。
 下肢が熱くなる。屈辱に全身に淡く汗がにじむのがわかる。だが、いったん生まれた熱は消えてくれない。
 腰の薄布ではアベルを守ってくれず、肉体の変化のすべてが見物人たちの目にほぼ晒されているのかと思うと、アベルは気が狂いそうなほどにいたたまれないのだが、アベルの魂は狂ってしまって無我の極致へ飛翔することよりも、汚れきった現世にとどまりつづけ、この歪んだよろこびを味わうことを選んでしまっていた。
「さ、いいですね。下ろしますよ」
 ジャムズの、丁寧だが、断固とした口調がアベルの耳朶を打つ。
「え? あっ、いや! いやだ!」
 陶酔感より未知の恐怖がまさり、アベルは身を震わせた。
「待って、待ってくれ……! あっ」
「駄目です。もう、甘やかしませんよ」
 ハルスもジャムズの言葉にしたがって、動きを調整する。
「ああ……! む、無理だ!」
 だが、アベルの、充分にほぐされた蕾は、艶光りする道具の先端めがけて下ろされていく。
 固いものが、中心に触れたのを、アベルは感じた。
「あっ! つ、ついた!」
 おぞましさと未知の体験への恐怖にアベルは吼えるように叫んでいた。
「いや! いやだ! そ、それ、止めて! 止めろ!」
「動かないでください」
 ああ……、という悲鳴のような喘ぎは声にならない。
 宦官二人によってがっちりとつかまれて動かせない下半身の代わりに、死にもの狂いになって鎖でつながれている両手をアベルは揺さぶっていたが、鎖は不協和音をたててアベルの抗議を伝えはしたものの、誰の耳に響くことなく終わった。
 その間にも、わずかずつ、確実に黒檀の凶器はアベルの体内へと侵入していく。正確に言うならば、アベルの肉体がその小さな凶器を呑み込んでいくのだ。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

アイドルグループの裏の顔 新人アイドルの洗礼

甲乙夫
恋愛
清純な新人アイドルが、先輩アイドルから、強引に性的な責めを受ける話です。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

捜査員達は木馬の上で過敏な反応を見せる

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

処理中です...