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邪淫の目覚め 八
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アベルの肉体、そして心の異変を察知したアイーシャは黒目を輝かせた。
「まあ……」
珍味を前にしたように、今にも舌なめずりしそうだ。
「やっぱり白人種は好色ね。すっかり喜んでいるみたい」
アーミナとエリスも面白い物を見るようにアベルの中心を凝視している。
「ようやく調教の成果が出てきたということですね。素晴らしい。これでアルベニス伯爵は陛下との初夜を充分楽しめるようになりますよ」
アーミナの言葉にアベルは顔を振っていた。
「ち、ちがう、これは……ちがう」
言いつつ全身から血が引いていくのを感じた。
「ちがうものですか。ジャムズ、鏡の前に連れて行ってやるといいわ」
「あ、よせ、よせ!」
ようやく鎖を外されたかと思うと、宦官たちによってアベルは否応なしに部屋の隅に立ててある大きな楕円形の姿見のまえに連れて行かれた。
「ほうら、よくご覧」
「……」
アベル自身、自分でも信じられない。
これほど、心身を切り刻むような凄まじい調教を受けて、憎悪と憤怒に身を焼かれて苦しんでいるというのに、あろうことかアベルの二十二という若い肉体は、主の心を裏切って、この状況に反応するようになってきているのだ。
「そ、そんな……」
網布を押し上げている若い芽。銀盤の上に浅ましい姿を晒す己の分身を、アベルは憎んだ。
アベルは気が遠くなりそうになった。これは、今まで受けたどんな仕打ちよりも激しくアベルを打ちすえる。
「恥じ入ることはないのですよ、伯爵。こうなってくると、伯爵のお身体はますます敏感になり、燃えやすくなりますよ」
恐ろしいことを喜々として言うエリスを睨みつける余裕もない。
被虐の悦び……。
そんなものがあるということは、おぼろげながらも知ってはいたが、自分にはまったく縁のないものだと思っていた。
今までのアベルの人生では想像もつかなかったその邪な感情が、本当に人の心には生じることがあるのだとアベルは思い知らされた。淫書や猥画のなかだけの絵空事ではなかったのだ。
視界が暗黒の色に変わり身体から力が抜けた瞬間、側にいた宦官の手が、アベルをささえてくれなければ、アベルは床に倒れていたろう。
「まあ……」
珍味を前にしたように、今にも舌なめずりしそうだ。
「やっぱり白人種は好色ね。すっかり喜んでいるみたい」
アーミナとエリスも面白い物を見るようにアベルの中心を凝視している。
「ようやく調教の成果が出てきたということですね。素晴らしい。これでアルベニス伯爵は陛下との初夜を充分楽しめるようになりますよ」
アーミナの言葉にアベルは顔を振っていた。
「ち、ちがう、これは……ちがう」
言いつつ全身から血が引いていくのを感じた。
「ちがうものですか。ジャムズ、鏡の前に連れて行ってやるといいわ」
「あ、よせ、よせ!」
ようやく鎖を外されたかと思うと、宦官たちによってアベルは否応なしに部屋の隅に立ててある大きな楕円形の姿見のまえに連れて行かれた。
「ほうら、よくご覧」
「……」
アベル自身、自分でも信じられない。
これほど、心身を切り刻むような凄まじい調教を受けて、憎悪と憤怒に身を焼かれて苦しんでいるというのに、あろうことかアベルの二十二という若い肉体は、主の心を裏切って、この状況に反応するようになってきているのだ。
「そ、そんな……」
網布を押し上げている若い芽。銀盤の上に浅ましい姿を晒す己の分身を、アベルは憎んだ。
アベルは気が遠くなりそうになった。これは、今まで受けたどんな仕打ちよりも激しくアベルを打ちすえる。
「恥じ入ることはないのですよ、伯爵。こうなってくると、伯爵のお身体はますます敏感になり、燃えやすくなりますよ」
恐ろしいことを喜々として言うエリスを睨みつける余裕もない。
被虐の悦び……。
そんなものがあるということは、おぼろげながらも知ってはいたが、自分にはまったく縁のないものだと思っていた。
今までのアベルの人生では想像もつかなかったその邪な感情が、本当に人の心には生じることがあるのだとアベルは思い知らされた。淫書や猥画のなかだけの絵空事ではなかったのだ。
視界が暗黒の色に変わり身体から力が抜けた瞬間、側にいた宦官の手が、アベルをささえてくれなければ、アベルは床に倒れていたろう。
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