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邪淫の目覚め 六
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「ああっ、はぁっ、ああああー!」
人の放つものとは思えない声をあげたアイーシャが首を垂らす。
どうやら極め抜いたようだ。
アベルはひたすら黙って見ているしかない。
心得たもので、宦官たちは、まだ夢幻境をさまよっているアイーシャの興を醒まさないように、丁寧な仕草で彼女を支え、背や胸をそっと撫でている。
彼らの無骨な外見からは想像できないほどの優しげな態度だ。特にジャムズは熱心にアイーシャの身体をまさぐり、やがて少しずつ現世に戻ってきたアイーシャの腰をささえて、木馬から下りさせる。その表情は、万が一にもアイーシャの身体を傷つけないようにと、慎重そのものだ。
酔っているように、よたよたとしたおぼつかない足取りだったが、少しずつ意識がしっかりしてきたのか、アイーシャはサライアに手伝わせて着物を纏おうとしたが、ふと、なにか悪戯を思いついた悪童のような顔になった。
「立たせなさい」
ようやく許されて身を起こしたアベルの体躯の上で、アイーシャの黒い目線が這うようにさまよう。
アベルは苦しい姿勢を取らされていたせいでしびれた足の苦痛もわすれてアイーシャを見つめ返した。
「不敵な目ね。これはまだまだ調教が必要そうね」
この上まだ何かされるのかと内心怯えたアベルに、アイーシャはサライアが持っていた布の塊りから、一枚の薄布を取り上げた。
ほんのり薄桃の網布。アイーシャの腰巻である。
女性の秘部を覆うものを鼻先に突きだされてアベルはたじろぐ。
そんなアベルの途惑いを面白がりならが、アイーシャは声高に告げた。
「これをあげるわ。お前に似合いそう」
「なっ!」
屈辱と、あまりの侮辱にアベルは、あれほど散々辱しめられた痛みもわすれて、アイーシャを睨みつけた。アイーシャはますます興に乗ったように腰巻を手で振った。
「ほうら、私が着けてあげるわ。ほら、そんなもの、早く取りなさい。ジャムズ!」
「はっ」
言うや、身をかがめたジャムズの無骨な手がアベルが驚くほどの素早さで伸びてくる。
「うわっ!」
アベルを守っていた帯布は石床の上に落ち、それこそのたうつ蛇のように見える。
守るものが何もない股間に風を感じ、アベルは歯を食いしばったが、この辱しめも、これから振りかかってくる辱しめに比べればまだましだと思えた。
「ふふふふふ」
薄桃の布きれを振りまわすアイーシャは性悪さと邪悪さにあふれて、いっそう強烈な印象をはなっている。
「や、やめろ! 嫌だ! く、来るな!」 声が涙声になりそうだ。
アベルは手鎖が動く範囲で必死に身体を動かしたが、またすぐジャムズたちによって抑え込まれてしまう。
「さ、じっとして。いくらグラリオンが暖かいとはいっても、そのままだと風邪をひいてしまうでしょう?」
「よ、よせ! やめろ! ふざけるな! やめないか! 触るな、淫婦!」
アベルの拒絶などものともせず、とうとうアイーシャはその薄い布でアベルの腰を覆い、左の脇腹で細紐をきつくくくってしまう。
「よ、よせ! やめろ!」
作業を終えたアイーシャの手が離れた瞬間、アベルは弱音めいた口調でも言わずにいられなかった。
人の放つものとは思えない声をあげたアイーシャが首を垂らす。
どうやら極め抜いたようだ。
アベルはひたすら黙って見ているしかない。
心得たもので、宦官たちは、まだ夢幻境をさまよっているアイーシャの興を醒まさないように、丁寧な仕草で彼女を支え、背や胸をそっと撫でている。
彼らの無骨な外見からは想像できないほどの優しげな態度だ。特にジャムズは熱心にアイーシャの身体をまさぐり、やがて少しずつ現世に戻ってきたアイーシャの腰をささえて、木馬から下りさせる。その表情は、万が一にもアイーシャの身体を傷つけないようにと、慎重そのものだ。
酔っているように、よたよたとしたおぼつかない足取りだったが、少しずつ意識がしっかりしてきたのか、アイーシャはサライアに手伝わせて着物を纏おうとしたが、ふと、なにか悪戯を思いついた悪童のような顔になった。
「立たせなさい」
ようやく許されて身を起こしたアベルの体躯の上で、アイーシャの黒い目線が這うようにさまよう。
アベルは苦しい姿勢を取らされていたせいでしびれた足の苦痛もわすれてアイーシャを見つめ返した。
「不敵な目ね。これはまだまだ調教が必要そうね」
この上まだ何かされるのかと内心怯えたアベルに、アイーシャはサライアが持っていた布の塊りから、一枚の薄布を取り上げた。
ほんのり薄桃の網布。アイーシャの腰巻である。
女性の秘部を覆うものを鼻先に突きだされてアベルはたじろぐ。
そんなアベルの途惑いを面白がりならが、アイーシャは声高に告げた。
「これをあげるわ。お前に似合いそう」
「なっ!」
屈辱と、あまりの侮辱にアベルは、あれほど散々辱しめられた痛みもわすれて、アイーシャを睨みつけた。アイーシャはますます興に乗ったように腰巻を手で振った。
「ほうら、私が着けてあげるわ。ほら、そんなもの、早く取りなさい。ジャムズ!」
「はっ」
言うや、身をかがめたジャムズの無骨な手がアベルが驚くほどの素早さで伸びてくる。
「うわっ!」
アベルを守っていた帯布は石床の上に落ち、それこそのたうつ蛇のように見える。
守るものが何もない股間に風を感じ、アベルは歯を食いしばったが、この辱しめも、これから振りかかってくる辱しめに比べればまだましだと思えた。
「ふふふふふ」
薄桃の布きれを振りまわすアイーシャは性悪さと邪悪さにあふれて、いっそう強烈な印象をはなっている。
「や、やめろ! 嫌だ! く、来るな!」 声が涙声になりそうだ。
アベルは手鎖が動く範囲で必死に身体を動かしたが、またすぐジャムズたちによって抑え込まれてしまう。
「さ、じっとして。いくらグラリオンが暖かいとはいっても、そのままだと風邪をひいてしまうでしょう?」
「よ、よせ! やめろ! ふざけるな! やめないか! 触るな、淫婦!」
アベルの拒絶などものともせず、とうとうアイーシャはその薄い布でアベルの腰を覆い、左の脇腹で細紐をきつくくくってしまう。
「よ、よせ! やめろ!」
作業を終えたアイーシャの手が離れた瞬間、アベルは弱音めいた口調でも言わずにいられなかった。
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