55 / 150
邪淫の目覚め 二
しおりを挟む
「伯爵、お辛いでしょうが、このままでは本当に蛇が伯爵のなかで孵ってしまうかもしれません。いくら小さくても毒を持っているかも……。ここは、アイーシャ様のおっしゃるとおりにされた方がよろしいかと」
エリスのかしこまった丁寧な言葉に、アベルは金の眉を寄せ、目を閉じた。白い頬が、汗とは別のもので濡れていく。
「せ、せめて、向こうをむいていてくれ……」
弱音めいたことは言いたくないが、このときはもうアベルは限界にきていた。
「なに言っているのよ、それでは意味がないでしょう? ほら、早く産みなさい。ほら!」
アイーシャが扇の羽先でアベルのほんのり赤ずんでいる胸の先端をつつく。
「うっ……! うう」
あるかなしかのもどかしい刺激は、アベルの脳髄をとろかす。四肢をつっぱらせ、首を振る。どこか幼児めいてきたその仕草に、アイーシャの唾を飲む音が響きそうだ。
「ふぅっ、ううっ、ううっ!」
アベルは悔しげに、切なげに、汗と涙に濡れた頬や項を黄昏の光のなかにゆらめかせ、耐えきれなくなったように嗚咽をこぼした。
「すさまじい恰好ね。お美しい伯爵様が、脚をふんばってお尻を突き出して」
辱しめの言葉に、もういっそ舌を噛み切って果ててしまいたい、とすらアベルは思ったが、それでも死ぬことはできず、そんな死ねない我が身が呪わしく、口惜しく、ふたたび嗚咽する。
「ううっ! ううっ! うううっ!」
どこまでも残酷なアーミナが、膝を折ってかがみこむと、帯をまくりあげ、声高に言う。
「おや、出てきた、出てきた」
アイーシャがはしゃいだ声をあげる。
「ほほほほほ。ほら、もうちょっとよ」
エリスやサライアも、目元を赤く染めて、うっとりとアベルの凄まじい姿に魅入られたように目を離せないでいる。
「はぁ! ああっ! ああああ!」
辛そうな絶叫のあと、皿を打つ音。
「お、出た!」 アーミナが皿に落ちた卵を検分し、ふくみ笑いを浮かべる。殻は欠けているが、卵白はこぼれていない。
アイーシャとアーミナの黒い目がかち合う。
卵は、最初に孵化したもの以外は、形のよく似た山鳥の卵であり、しかも茹でてあるものだった。
そのことに気付かないでいるアベルは、必死になってもうひとつの卵を排出しようと踏ん張っている。浅ましく、哀れで、どこかいじらしく、どこか悲しく、そして美しい姿だった。
見物人たちは魅入られきったように、アベルの淫らな姿と恥辱にみちた行為を眺めつづけた。
エリスのかしこまった丁寧な言葉に、アベルは金の眉を寄せ、目を閉じた。白い頬が、汗とは別のもので濡れていく。
「せ、せめて、向こうをむいていてくれ……」
弱音めいたことは言いたくないが、このときはもうアベルは限界にきていた。
「なに言っているのよ、それでは意味がないでしょう? ほら、早く産みなさい。ほら!」
アイーシャが扇の羽先でアベルのほんのり赤ずんでいる胸の先端をつつく。
「うっ……! うう」
あるかなしかのもどかしい刺激は、アベルの脳髄をとろかす。四肢をつっぱらせ、首を振る。どこか幼児めいてきたその仕草に、アイーシャの唾を飲む音が響きそうだ。
「ふぅっ、ううっ、ううっ!」
アベルは悔しげに、切なげに、汗と涙に濡れた頬や項を黄昏の光のなかにゆらめかせ、耐えきれなくなったように嗚咽をこぼした。
「すさまじい恰好ね。お美しい伯爵様が、脚をふんばってお尻を突き出して」
辱しめの言葉に、もういっそ舌を噛み切って果ててしまいたい、とすらアベルは思ったが、それでも死ぬことはできず、そんな死ねない我が身が呪わしく、口惜しく、ふたたび嗚咽する。
「ううっ! ううっ! うううっ!」
どこまでも残酷なアーミナが、膝を折ってかがみこむと、帯をまくりあげ、声高に言う。
「おや、出てきた、出てきた」
アイーシャがはしゃいだ声をあげる。
「ほほほほほ。ほら、もうちょっとよ」
エリスやサライアも、目元を赤く染めて、うっとりとアベルの凄まじい姿に魅入られたように目を離せないでいる。
「はぁ! ああっ! ああああ!」
辛そうな絶叫のあと、皿を打つ音。
「お、出た!」 アーミナが皿に落ちた卵を検分し、ふくみ笑いを浮かべる。殻は欠けているが、卵白はこぼれていない。
アイーシャとアーミナの黒い目がかち合う。
卵は、最初に孵化したもの以外は、形のよく似た山鳥の卵であり、しかも茹でてあるものだった。
そのことに気付かないでいるアベルは、必死になってもうひとつの卵を排出しようと踏ん張っている。浅ましく、哀れで、どこかいじらしく、どこか悲しく、そして美しい姿だった。
見物人たちは魅入られきったように、アベルの淫らな姿と恥辱にみちた行為を眺めつづけた。
1
お気に入りに追加
408
あなたにおすすめの小説


青少年病棟
暖
BL
性に関する診察・治療を行う病院。
小学生から高校生まで、性に関する悩みを抱えた様々な青少年に対して、外来での診察・治療及び、入院での治療を行なっています。
※性的描写あり。
※患者・医師ともに全員男性です。
※主人公の患者は中学一年生設定。
※結末未定。できるだけリクエスト等には対応してい期待と考えているため、ぜひコメントお願いします。



イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。


ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる