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毒園の花 十
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アベルは気も狂わんばかりに首を振った。
「い、いやだ、いや! やめろ、やめてくれ! ……ひぃっ! あ、ああ……」
「あ、ああ、ああ! こ、こんな、こんな」
生々しすぎるその感触に、アベルは息をすることも忘れて口をぱくぱくと開けて喘ぐしかない。
行為自体のもたらす屈辱感、背徳感もさることながら、アベルをもっとも恐れさせるのは、先ほど見た皿を這う緑の小蛇だ。
万が一、卵が割れたら……と、想像するだけでもおぞましい。
「ほうら。全部呑みこんだわ。すごいわね、ずぶずぶと入っていったわ。本当に欲張りな孔ね。とんだ淫乱だわ」
仮にも王者の寵を受けた女性にあるまじき即物的な表現に、誰も眉ひとつしかめないのは、皆慣れているからだろう。
普段は貴婦人らしく上品ぶってもいても、所詮、もとは貧民の奴隷あがりであり、十一で売られてからは、顔と身体、そして手管で、何百何千の競争相手と競り合って、筆頭寵姫の座まで這いあがってきた女である。宦官長ハルムとおなじく、人に言えないことも多々してきたはず。美しく見える顔の皮いちまい剝くと、そこには蛆がわいたような腐肉がつまっている女だ。
「でも、まだ物足りなさそう」
アイーシャが指で、ややふくらんだアベルの蕾をつつく。
「うう……」
アベルは悔しさに歯を食いしばった。気が狂わないのが自分でも不思議だ。
「え? なあに? まだ食べ足りない?」
アイーシャは膝を折ると、いかにも奴隷上がりらしく、平然と床に身をかがめ――本当の貴婦人というものは、自分より身分が上の人間の前以外では滅多に膝を折ることはない――人前でこれもまた平然とアベルの腰に顔を近づけ、耳を傾けてそんなことを言う。
「もっと欲しい? まぁ、本当にとんだ欲張りね」
さもアベルの身体からそう聞いたのだ、という演技をする。残酷、かつ悪趣味な女だ。さすがにエリスは唇を噛んだが、アーミナはますます面白がって黒い目を輝かせた。彼もまた、人に言えぬことをして後宮社会を生き抜き、その毒に染まり抜いた人間なのだ。
ふふふふふ……。アーミナの毒のような笑い声が響く。
「それじゃ、もうひとつ入れてあげましょうか?」
「や、やめろぉ!」
アベルは叫び声をあげていた。
今入れられている卵ひとつでも苦しく、身を裂かれるような圧迫感に悩まされているのに、さらにまた入れられるなど考えられない。
「や、やめろ、やめてくれ! 頼むからやめてくれ……」
「い、いやだ、いや! やめろ、やめてくれ! ……ひぃっ! あ、ああ……」
「あ、ああ、ああ! こ、こんな、こんな」
生々しすぎるその感触に、アベルは息をすることも忘れて口をぱくぱくと開けて喘ぐしかない。
行為自体のもたらす屈辱感、背徳感もさることながら、アベルをもっとも恐れさせるのは、先ほど見た皿を這う緑の小蛇だ。
万が一、卵が割れたら……と、想像するだけでもおぞましい。
「ほうら。全部呑みこんだわ。すごいわね、ずぶずぶと入っていったわ。本当に欲張りな孔ね。とんだ淫乱だわ」
仮にも王者の寵を受けた女性にあるまじき即物的な表現に、誰も眉ひとつしかめないのは、皆慣れているからだろう。
普段は貴婦人らしく上品ぶってもいても、所詮、もとは貧民の奴隷あがりであり、十一で売られてからは、顔と身体、そして手管で、何百何千の競争相手と競り合って、筆頭寵姫の座まで這いあがってきた女である。宦官長ハルムとおなじく、人に言えないことも多々してきたはず。美しく見える顔の皮いちまい剝くと、そこには蛆がわいたような腐肉がつまっている女だ。
「でも、まだ物足りなさそう」
アイーシャが指で、ややふくらんだアベルの蕾をつつく。
「うう……」
アベルは悔しさに歯を食いしばった。気が狂わないのが自分でも不思議だ。
「え? なあに? まだ食べ足りない?」
アイーシャは膝を折ると、いかにも奴隷上がりらしく、平然と床に身をかがめ――本当の貴婦人というものは、自分より身分が上の人間の前以外では滅多に膝を折ることはない――人前でこれもまた平然とアベルの腰に顔を近づけ、耳を傾けてそんなことを言う。
「もっと欲しい? まぁ、本当にとんだ欲張りね」
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「や、やめろぉ!」
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今入れられている卵ひとつでも苦しく、身を裂かれるような圧迫感に悩まされているのに、さらにまた入れられるなど考えられない。
「や、やめろ、やめてくれ! 頼むからやめてくれ……」
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