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陥穽 七
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アベルは咄嗟に顔をもたげて訴えた。
エリスの手は、アーミナとちがって優しっくいたわるようなものだが、今のアベルにとっては剃刀だ。
「エリス、悪戯するなよ。ここだけで感じてもらうのが目的なんだからな」
「はいはい」
それから、どれぐらいたったか。アベルの視界は真っ白になっていた。実際には意識をなくしていたのは数秒なのだが、数時間にも思える。
「さぁ、伯爵、ご気分はどうですか? 慣れると気持ちいいものでしょう?」
アーミナに軽く臀部をはたかれて、朦朧としていたアベルは意識を取り戻した。
「ううううう……!」
油にまみれたトパーズの連なりが、まるで黄金の小蛇のようにアベルの内側でうごめいているようだ。その絶妙な感触にアベルはのたうち、鎖がアベルに代わって泣き声をたてる。
「ふふふふふ」 アーミナは持ち手の銀輪をかるくひっぱった。
キュッ――。
「ひぃっ!」
これは、凄まじい刺激となったようだ。
当然ながら、こういた痴戯は、女と交わったこともないアベルにとっては生まれて初めてのことであり、あまりにも強烈な経験で、アベルは五体を緊張させ、のけぞらずにいられない。
アベルの反応がおもしろいのか、アーミナはさらに銀輪を引く手に力をこめる。
「あっ、ああっ! ああっ! やめろ、やめ! もうよせ!」
「うるさいよ、奴隷の分際で」
ぱしん、とまた軽くアーミナの手が臀部を打つ。
アベルは屈辱に目から火花が散りそうだった。
(かならず……)
目尻にあらたな涙が一筋ながれる。
(かならず、生きて、逃げのびて……復讐してやる。こいつら全員殺してやる!)
それしか、もはやアベルには生きる理由がない。
「ほらほら、これはどうだ?」
「うう! ……うっ、うっ」
緩急をつけて連珠を引っぱられ、アベルは発狂ぎりぎりまで追い詰められる。いっそ狂ってしまえれば楽だったろう。
「ああっ、ああっ、あああ! はぁ――」
「ああ、いっちゃった」
エリスのとぼけた言葉にアーミナはのけぞって笑った。
「さ、伯爵、もう一度やりますよ。今度はもうちょっと頑張ってください」
アベルは不甲斐なく弱音を吐いてしまった。
「も、もう無理だ!」
「なに言っているんだよ。今日一日、これで身体を慣らすんだ。明日には、これより大きめのルビーでカイが遊んでくれる」
「次の日は僕がサファイヤで。楽しみだな」
優しそうに思えても、エリスもやはり菫という名の調教師である。残酷さをちらつかせる小悪魔たちにアベルはすっかり翻弄されてしまっていた。
「ほら、入れるよ」
アーミナの手は、ふたたびアベルの蕾にトバーズを押し込む。
「ああ……!」
情けない話だが、蕾は先ほどより確実にはやく玉を飲みこんでいく。
「ふふ。味を覚えたみたいだね、伯爵様のここは……。嬉しそうに喰いついてくるよ」
「や、やめろ、やめ……あっ、ああ……!」
やがて、アベルの抗いの声は小さいものになっていく。
朋輩たちによって辱しめられるアベルの様子を、一歩下がったところでカイは冷静に見ていた。そして、さらに壁の向こうでは、王に命じられた男がアベルの無残な姿を魅入られたように見つめていた。
エリスの手は、アーミナとちがって優しっくいたわるようなものだが、今のアベルにとっては剃刀だ。
「エリス、悪戯するなよ。ここだけで感じてもらうのが目的なんだからな」
「はいはい」
それから、どれぐらいたったか。アベルの視界は真っ白になっていた。実際には意識をなくしていたのは数秒なのだが、数時間にも思える。
「さぁ、伯爵、ご気分はどうですか? 慣れると気持ちいいものでしょう?」
アーミナに軽く臀部をはたかれて、朦朧としていたアベルは意識を取り戻した。
「ううううう……!」
油にまみれたトパーズの連なりが、まるで黄金の小蛇のようにアベルの内側でうごめいているようだ。その絶妙な感触にアベルはのたうち、鎖がアベルに代わって泣き声をたてる。
「ふふふふふ」 アーミナは持ち手の銀輪をかるくひっぱった。
キュッ――。
「ひぃっ!」
これは、凄まじい刺激となったようだ。
当然ながら、こういた痴戯は、女と交わったこともないアベルにとっては生まれて初めてのことであり、あまりにも強烈な経験で、アベルは五体を緊張させ、のけぞらずにいられない。
アベルの反応がおもしろいのか、アーミナはさらに銀輪を引く手に力をこめる。
「あっ、ああっ! ああっ! やめろ、やめ! もうよせ!」
「うるさいよ、奴隷の分際で」
ぱしん、とまた軽くアーミナの手が臀部を打つ。
アベルは屈辱に目から火花が散りそうだった。
(かならず……)
目尻にあらたな涙が一筋ながれる。
(かならず、生きて、逃げのびて……復讐してやる。こいつら全員殺してやる!)
それしか、もはやアベルには生きる理由がない。
「ほらほら、これはどうだ?」
「うう! ……うっ、うっ」
緩急をつけて連珠を引っぱられ、アベルは発狂ぎりぎりまで追い詰められる。いっそ狂ってしまえれば楽だったろう。
「ああっ、ああっ、あああ! はぁ――」
「ああ、いっちゃった」
エリスのとぼけた言葉にアーミナはのけぞって笑った。
「さ、伯爵、もう一度やりますよ。今度はもうちょっと頑張ってください」
アベルは不甲斐なく弱音を吐いてしまった。
「も、もう無理だ!」
「なに言っているんだよ。今日一日、これで身体を慣らすんだ。明日には、これより大きめのルビーでカイが遊んでくれる」
「次の日は僕がサファイヤで。楽しみだな」
優しそうに思えても、エリスもやはり菫という名の調教師である。残酷さをちらつかせる小悪魔たちにアベルはすっかり翻弄されてしまっていた。
「ほら、入れるよ」
アーミナの手は、ふたたびアベルの蕾にトバーズを押し込む。
「ああ……!」
情けない話だが、蕾は先ほどより確実にはやく玉を飲みこんでいく。
「ふふ。味を覚えたみたいだね、伯爵様のここは……。嬉しそうに喰いついてくるよ」
「や、やめろ、やめ……あっ、ああ……!」
やがて、アベルの抗いの声は小さいものになっていく。
朋輩たちによって辱しめられるアベルの様子を、一歩下がったところでカイは冷静に見ていた。そして、さらに壁の向こうでは、王に命じられた男がアベルの無残な姿を魅入られたように見つめていた。
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