黄金郷の夢

文月 沙織

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陥穽 五

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「エリス、どけよ」
 エリスを下がらせて、アーミナは褥にあがると、連珠の持ち手の銀輪を取り、アベルの臀部に近づける。香油のかおりがたちのぼる。アベルは脚にしずくが落ちるのを感じて、身をすくめた。
「うう……」
 油で濡れたアーミナの方手が、臀部の一番やわらかい箇所に触れてきた。
「あっ、ああ……!」
 肉を割られる恐怖と羞恥にアベルはふるえずにいられない。刀剣や弓矢を前にしたとしても、ふるえるたことなど一度もなかったというのに。
「じっとしていろよ。ふーん……、綺麗な色だな。汚れのない桃色だな。……やや濃い、桃色の蕾、というところかな。エリス、おまえ、ここを少し持っていろよ」
「わかった」
 少年宦官たちは場違いなほど気楽な口調で役割分担をきめる。アベルの額の汗は多くなる。いや、額だけでなく、背にも肩にも腰にも脚にも恐怖と恥辱の汗が噴きだす。
「さ、入れるぞ。覚悟はいいな?」
「あっ、ああ、待って、待ってくれ!」
 今まで散々辱しめを受けてはいても、そこをいじられるのは初めてで、さすがにアベルは悲鳴をあげずにいられない。いや、最初の夜に王に指で刺激されたことはあったが……、今はそれ以上の恐怖が迫ってきている。
「うるさい。騎士のくせに、つくづく往生際が悪いな。潔く負けを認めろよ。ほら、入れるぞ」
(ああ……)
 そこに、小さな、固い、濡れた物があてがわれたのをアベルは感じた。
「う、うわぁ!」
 
 ぷつり――、という音なき音がアベルの耳に響いた。

「あっ、あっ、やめ、やめ、やめろ! やめろ!」
 アベルは目の前が文字どおり真っ暗になったのを感じて、恥も見栄もわすれて、叫んでしまう。
「大袈裟だな、こんな豆粒程度のもので。ほら、いくぞ」
「ひっ、ひぃっ!」

 ぷつり、ぷつり――。

「ああっ! ああっ! ああっ! やめ、やめてくれ、やめて!」
 少年宦官たちは苦笑した。
 アーミナのいうように、トパーズの大きさは本当に小さな物で、わずか数粒入れられただけでアベルの反応は大げさに思えたのだ。
「うるさいよ! これぐらいでぴぃぴぃ泣くなんて、とんだ見かけ倒しだな」
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