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毒菫 一
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アーミナの黒玻璃の瞳が陰湿なものを秘めてギラギラとにぶく輝く。ちなみに現在は王の生母もすでに亡いので、後宮においては菫が絶対的な権力を持つことになるという。
「アーミナ、そんなきつい言い方しなくたって……。アルベニス伯爵はグラリオン後宮に来たばかりで、まだ後宮のしきたりや習慣に慣れていないだけなんだよ。僕たちでゆっくり教えてあげればいい」
エリスの取りなしに、カイは冷静に反論した。
「悪いけれど、ゆっくり教えてあげる時間はそうないんだ。アルベニス伯爵には、はやく慣れてもらわないと。昨夜は一晩かけて乳首を開発したから、これから三日かけて、尻をほぐさないとね。それからは尻の中を鍛えることになるね」
「じょ、冗談はやめろ!」
おぞましいことを淡々というカイにアベルは背が凍りつきそうになったが、そんなアベルをあっさり無視して、カイはアーミナに命じた。
「アーミナ、〝連珠〟を持ってきて」
「わかった」
アーミナははずんだ足取りで黄色の裾を揺らすと、壁際に置かれてある高価な調度品の棚に向かう。もどってきたときには、長方形の箱を手にしていた。それをうやうやしげにカイに差し出す。よく見ると、それは沈香木でできた三段重ねの箱だった。
気取った手つきでアーミナが一番上の箱の蓋をあける。かぐわしい香が一瞬たちのぼって消え、それに気を引かれたアベルが怒りもわすれて目を向けると、真紅の繻子布のうえに光っているのは黄玉だった。
質の良いものらしく、中庭から入ってくる昼の陽光を弾いて蠱惑的に輝いている。相当の高級品で、男のアベルは興味がないが、祖国の貴婦人や、後宮の女たちが見たら、喉から手が出るほどに欲しがるだろう。
「首飾り……?」
ぽつりと問うアベルに、アーミナは底意地の悪い笑顔を向けてきた。毒のある花のようだ。
「ふふふふ。これ、どうすると思う?」
トパーズの首飾りのように見えるそれの先には銀の小さな輪がある。それを指に持ち、アーミナはもったいぶった手つきで一本のトパーズの連なりを宙に揺らす。長さは普通の首飾りよりかなり長い。二連にするのかとアベルは想像した。
反応が遅いアベルを見て、カイもエリスも肩をすくめて、くすくす笑う。
「これで伯爵の〝内側〟を鍛えるのですよ」
カイの説明に、意味がわからず、アベルは数秒考えこんでしまった。
「にぶいなぁ。あーあ、これだから、育ちの良いお貴族様は」
アーミナの口調は蓮っ葉なものになり、乱暴な仕草で、連珠をアベルの鼻先に見せつける。
「つまり、これを、あんたの尻のなかに入れるんだよ」
「アーミナ、そんなきつい言い方しなくたって……。アルベニス伯爵はグラリオン後宮に来たばかりで、まだ後宮のしきたりや習慣に慣れていないだけなんだよ。僕たちでゆっくり教えてあげればいい」
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「悪いけれど、ゆっくり教えてあげる時間はそうないんだ。アルベニス伯爵には、はやく慣れてもらわないと。昨夜は一晩かけて乳首を開発したから、これから三日かけて、尻をほぐさないとね。それからは尻の中を鍛えることになるね」
「じょ、冗談はやめろ!」
おぞましいことを淡々というカイにアベルは背が凍りつきそうになったが、そんなアベルをあっさり無視して、カイはアーミナに命じた。
「アーミナ、〝連珠〟を持ってきて」
「わかった」
アーミナははずんだ足取りで黄色の裾を揺らすと、壁際に置かれてある高価な調度品の棚に向かう。もどってきたときには、長方形の箱を手にしていた。それをうやうやしげにカイに差し出す。よく見ると、それは沈香木でできた三段重ねの箱だった。
気取った手つきでアーミナが一番上の箱の蓋をあける。かぐわしい香が一瞬たちのぼって消え、それに気を引かれたアベルが怒りもわすれて目を向けると、真紅の繻子布のうえに光っているのは黄玉だった。
質の良いものらしく、中庭から入ってくる昼の陽光を弾いて蠱惑的に輝いている。相当の高級品で、男のアベルは興味がないが、祖国の貴婦人や、後宮の女たちが見たら、喉から手が出るほどに欲しがるだろう。
「首飾り……?」
ぽつりと問うアベルに、アーミナは底意地の悪い笑顔を向けてきた。毒のある花のようだ。
「ふふふふ。これ、どうすると思う?」
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「これで伯爵の〝内側〟を鍛えるのですよ」
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「にぶいなぁ。あーあ、これだから、育ちの良いお貴族様は」
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