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菫責め 六
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「お辛いですか? もう少し我慢してくださいね。僕たちだけのときは決して枷を外すなというご命令なのです」
カイの言葉にエリスが言い足した。
「なんといっても伯爵は騎士だものね。剣や弓矢の腕前もなかなかのものなのでしょう? 聞きましたよ。お国の御前試合では槍で優勝なされたとか? すごいな、こんなに綺麗な人なのに、強いんだね」
よもやこの国に自分の噂が伝わっていたとは思わず、「誰からその話を訊いたのだ」と問おうと口を開きかけた瞬間、さきにアーミナが言葉を発した。
「ふふふ。そのお強い騎士様のあんな格好を見れるなんて、僕たちは恵まれているね。眼福ですよ。お国の人たちが、伯爵様のあんなお姿を見たら、さぞ、びっくりするでしょうね? イサベル女王に見せてやりたいな、あなたのあの達きっぷり。客たちも皆大満足でしたよ。あなたは昨夜で、すっかり我が国の貴族たちを夢中にさせてしまいましたね。女官や侍女たちも、今朝からあなたの噂で盛り上がっています」
アベルは掛け布のしたで歯を食いしばった。手枷がなければ、アーミナに殴りかかっていたろう。
最初は三つ子のようによく似て見えた三人の少年宦官だが、やはりそれぞれ個性があり違って見えてくる。アーミナなかなり気性がきつく、陰険なところがあるようだ。
「アーミナ、およしよ。失礼だろう? アルベニス伯爵は陛下の〝妻〟なんだから」
たしなめるエリスに、アーミナはきつい目を向ける。
「ふん。まだ本当の夫婦というわけじゃないじゃないか。床入りの式を終えられるまでは、異国人にそういばられたくないね」
「まあね。伯爵が、エリスの言うように、まだ陛下との契りを交わしていないのは確かだ。これから、しっかりとアルベニス伯爵を調教して、陛下のお好みの身体に鍛えなおさないと」
カイの言葉に吐き気がしたアベルは、布をはねのけて叫んでいた。
「冗談ではない! 今すぐ私を解放しろ! 私は帝国の貴族で騎士だぞ!」
三人は一瞬驚いて目を見張ったものの、まるで面白い見世物でも見るようにアベルを目で揶揄った。
「面白いね、この〝奴隷〟は。言っておくけれど、僕たち〝菫〟は、後宮では宰相に次ぐ権力を持っているんだよ。いくら伯爵が陛下の妻になる人とはいえ、今はまだ一介の奴隷に過ぎないじゃないか? さらに言わせてもらえば、妻になったからといって、グラリオン宮廷では、妻妾にはいっさいの権利はないんだからね。ようく覚えておくといいよ。必要とあらば、僕たちは王の妻妾側室であっても鞭で打つ資格があるんだから。後宮では、王の御生母以外は、皆〝奴隷〟でしかないんだからね」
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「ふふふ。そのお強い騎士様のあんな格好を見れるなんて、僕たちは恵まれているね。眼福ですよ。お国の人たちが、伯爵様のあんなお姿を見たら、さぞ、びっくりするでしょうね? イサベル女王に見せてやりたいな、あなたのあの達きっぷり。客たちも皆大満足でしたよ。あなたは昨夜で、すっかり我が国の貴族たちを夢中にさせてしまいましたね。女官や侍女たちも、今朝からあなたの噂で盛り上がっています」
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「アーミナ、およしよ。失礼だろう? アルベニス伯爵は陛下の〝妻〟なんだから」
たしなめるエリスに、アーミナはきつい目を向ける。
「ふん。まだ本当の夫婦というわけじゃないじゃないか。床入りの式を終えられるまでは、異国人にそういばられたくないね」
「まあね。伯爵が、エリスの言うように、まだ陛下との契りを交わしていないのは確かだ。これから、しっかりとアルベニス伯爵を調教して、陛下のお好みの身体に鍛えなおさないと」
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